2011 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半の米国におけるキリスト教リベラリズムの政治的影響についての思想史研究
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11J09434
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大鳥 由香子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アメリカ合衆国 / キリスト教 / エキュメニズム / 国連 / リベラリズム / 反カトリシズム / プロテスタンティズム / ナショナリズム |
Research Abstract |
今年度の研究活動は、主にこれまでの研究の総括と博士論文の執筆に向けた基礎的な準備にわけられる。前者については、学会発表2件を行い、投稿論文1本を刊行し、日米双方の研究者から予想以上の高評価を得ることができ、宗教と政治の関係を歴史学の手法で読み解くことへの理解も深まった。 後者に関しては、今年度は主に3つの目標を立てて取り組んだ。それは、専門分野の基礎的な文献を読み研究動向を把握すること、博士論文のための論点を絞りこむこと、資料調査の見込みを立てることである。平成23年4月の時点では、博士論文執筆に向けた専門分野として19・20世紀のアメリカ史、思想史、キリスト教史を想定し、それらの分野におけるエキュメニズムの理解を把握しようと努めていた。しかし、アメリカ思想史では、エキュメニズムという視点はこれまでほとんど省みられることがなかったため、博士論文においてある特定の思想体系としてエキュメニズムを定義し、それを貫くことは非常に難しいと判断せざるを得なかった。同時に、本研究について、アメリカ・キリスト教史研究の近年の越境的展開を踏まえ、エキュメニズムを切り口としてアメリカ史を世界史的な視野から読み直すという期待も十分に持てることが分かった。そのうえで、博士論文ではエキュメニズムの政治文化と他の思想潮流(ナショナリズム、パトリオティズム、国際主義、(政治的な)リベラリズム、帝国主義、社会主義、共産主義、全体主義、反カトリシズム)との関係を主題として議論を組み立てるという方針を定めた。平成23年9月の渡米の際には、連邦教会協議会などに関する資料調査の収集の他、米国の歴史学、宗教学の研究者からも指導を受けた。その結果、本研究が日本のアメリカ研究のみならず、アメリカにおけるアメリカ史研究にとっても有意義なものになりえるとの確信が持てた。また、今後の研究活動必須のドイツ語の学習には特に力を入れ、専門的な文献も読めるようになってきたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初の予定通り、修士論文をもとにした日本国内での学会発表および雑誌論文(英語)の投稿を行うことができた。さらにその過程で、ハーヴァード大学で行われた研究会へも参加を勧められ、日本国外で研究成果を報告する機会にも恵まれた。一方、博士論文の作成に向けた研究に関しては、当初の計画とは異なる論の組み立てを目指すことにしたため、2次文献の把握が十分に進んでいない。しかし、平成23年9月に米国で資料調査を行い、博士論文の執筆のための基礎的な資料を確認、入手できたことは大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はこれまで通り歴史的資料の言説分析を主な手法として用いることになる。しかし、当初はエキュメニズムを切り口として議論する予定であったが、アメリカ宗教史および思想史の現在までの研究動向を鑑みてそれは難しいとの判断に至った。そのため、エキュメニズムの政治空間に入り込んだ他の思想潮流との関係に着目し、エキュメニズムそのものを思想の交錯する場として描くことに方針転換した。だがこの結果、本研究が参照すべき二次文献も増えた。特に、アメリカ宗教史の研究文献については出来る限りその把握と入手に努めているが、米国での資料調査の結果、各教派内で流通していた雑誌など日本国内からの調査では限界があることもわかった。そのため、今後はより長期で調査に出向くことも念頭において、本研究課題の遂行につとめたいと思っている。
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Research Products
(3 results)