2011 Fiscal Year Annual Research Report
銅酸化物の研究を基盤とする新規超伝導体の設計指針の構築
Project/Area Number |
11J09446
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
榊原 寛史 電気通信大学, 大学院・情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超伝導 / 銅酸化物 / 物質設計 / 物性物理 / バンド構造 / フェルミ面 / 磁性 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
研究テーマ名に「銅酸化物の研究を基盤とする新規超伝導体の設計指針の構築」とあることから、採用初年度は、まず銅酸化物の超伝導を説明する理論をより詳細にした。具体的には、Hsakakibara et al., Phys. Rev. Lett. 105, 057003 (2010).で既に説明した、2軌道模型による計算結果についてより深く調べ、超伝導の物質依存性が起こる理由を明確にした。その成果をPhys. Rev. B 85, 064501 (2012)(editor's suggestion)にまとめた。その中で、 (1)dz2軌道が超伝導を抑制する原因を詳細に調べ、突き止めた。これは、超伝導物質を設計する上で重要なヒントになると考えられる。 (2)超伝導臨界温度T_cが2種類の結晶構造のパラメータで記述できる可能性を説明した。具体的には、銅および酸素が形成する平面と銅の頂点方向に接続している酸素との距離h_0および平面同士の距離dの二つが重要であることを突き止めた。 学会での発表としては、日本物理学会67回年次大会「銅酸化物におけるdz2軌道混成による超伝導抑制メカニズム」およびアメリカ物理学会'Two-orbital analysis on the material dependence of Tc in the single-layered cuprates,'において上記(1)について議論を行った。他にも、26^<th>International Conferenceon Low Temperature Physicsのポスター発表およびプロシーディングにおいて、dz2軌道がフェルミ面の形状を決定している理由を説明した。 銅酸化物のT_cに対する圧力効果について、日本物理学会2011年秋季大会「銅酸化物における超伝導転移温度の一軸性圧力効果の第一原理計算による解析」において議論を行った。現在その結果をまとめた論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の到達目標は、物質設計の基礎をおいている銅酸化物超伝導のメカニズムについてのより詳細な解析であった。初年度の主たる成果として、Phys.Rev.B 85, 064501(2012)の中で発表したが、dz2軌道による超伝導抑制のメカニズムについてより高いレベルでの理解を得ることができた。これは超伝導物質を設計する上でいくつかの非常に有効な情報を得ることができたため、研究は予定通り前進していると評することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎である銅酸化物についての研究は順調である一方、少なくとも現時点では、学会および雑誌論文等で具体的な新物質の提案ができてない点が課題として残っている。今後は、新物質のタイプについて視野を広げながら、既に得られた知見が十分生かされるような物質の条件を絞り込むことで、具体的な物質にまで言及できるよう心掛ける。できるだけ早く、実験的に実現可能な範囲内の枠内で銅酸化物と同じ状況になると思われる物質を発掘したい。
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