2012 Fiscal Year Annual Research Report
銅酸化物の研究を基盤とする新規超伝導体の設計指針の構築
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11J09446
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
榊原 寛史 電気通信大学, 大学院・情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超伝導 / 銅酸化物 / 物質設計 / 物性物理 / バンド構造 / フェルミ面 / 磁性 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
採用2年目は銅酸化物の超伝導転移温度(T_c)の物質依存性について、1年目に比べより詳細な研究を行った。具体的には、銅酸化物における圧力の君に対する効果を調べた。銅酸化物は君に対する異方的な圧力効果を持つことが熱膨張係数の測定実験から知られているが、我々は国際会議M2S2012において、その異方性の変動因子が主に3d_<x2-y2>軌道と3d_<z2>軌道の準位差△E、バンド幅W、およびフェルミ面の湾曲の指標であるr_<x2-y2>の三つであることを発表し、そのことについて海外の物理学者と議論を交わした。 また、我々は論文Phys.Rev.B86,134520(2012)において、前述の三つのパラメータのT_cへの効果の総和から静水圧力の実験結果を理解できることを示した。その中から、君を高めるためにはフェルミ面を構成するメインバンドにおける3d_<x2-y2>軌道成分の純度を高める事が重要であるという知見を得た。その発見をメインテーマに日本物理学会2012年秋季大会および国際会議IUMRS-ICEM2012で国内外の物理学者たちと議論を交わした。特に、バンド幅Wについてはさらに詳しく国際会議CCP2012、およびそのプロシーディングスにおいて詳細な効果を検証した。CCP2012においてそれ以外では、単位胞にCuO_2平面が複数枚入った物質群における超と頂点酸素高さの関係についても言及した。 年度の後半は今まで得た君の変化に対する知見から、さらに高い君を持つ銅酸化物の設計指針の構築を試みた。具体的には、4s軌道とメインバンドを形成している3d_<x2-y2>軌道の間の電子のホッピングを抑制することでT_cが上昇することを示した。その成果を、日本物理学会第68回年次大会、国際会議ISS2012、およびそのプロシーディングスにおいて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文Phys.RevB86,134520(2012)において、銅酸化物に対する圧力効果を十分に議論し、銅酸化物超伝導にとって最も有利な状況について重要な知見を得た。このことから、研究の基盤である銅酸化物に対する理解は着々と深まっており、順調に研究は遂行できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
物質設計指針の構築の基盤である銅酸化物の物質依存性の研究は着々と進みつつある。しかしながら、新規物質の提案については現状発表ができていない。現在Sr_2VO_4、Sr_2NbO_4という新物質の研究に取り組んでおり、その成果を25年度中に発表することを目標としている。また、ニッケル系の酸化物についても銅酸化物と類似のものが見つかりつつあり、超伝導発現に最適な条件を特定することを目指している。
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Research Products
(9 results)