2013 Fiscal Year Annual Research Report
銅酸化物の研究を基盤とする新規超伝導体の設計指針の構築
Project/Area Number |
11J09446
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
榊原 寛史 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超伝導 / スピン揺らぎ / 銅酸化物 / d電子系 / 物質設計 / 第一原理バンド計算 / フェルミ面 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
採用3年目は、銅酸化物高温超伝導体の転移温度Tcを具体的に上昇させる方法について議論を行った。前年度で議論した圧力効果にっいて着目し、元素置換の効果によって格子定数を縮めることができた場合、同様の効果が得られると考えた。研究の対象として、水銀系銅酸化物について研究を行った。水銀系銅酸化物はイオン半径の大きい元素であるバリウムを含むが、このバリウム原子をストロンチウム等で置換し、イオン半径を小さくした場合に面内方向の格子定数が収縮する。これにより、d_x2-_y2軌道と混成する二つの軌道、4s軌道とd_<z2>軌道の混成効果を低下させることでTcが上昇することが、第一原理バンド計算から導出した有効模型に対して揺らぎ交換近似を適用した計算の結果より分かった。 また、銅酸化物のTcの物質依存性についても理解を深めた。これまでの研究では、銅酸化物の中でも単位胞あたりに銅元素が一つある物質、所謂一層系についてのみTcと結晶構造の相関関係を議論してきたが、d_<z2>軌道混成が効く(それゆえTcが低下している)ことが理論的に示された物質はLa_2CuO_4のみであり、実質的にはLa_2CuO_4の転移温度の低さを説明する研究にとどまっていた。そのため、特に2層系銅酸化物について、広範囲の物質に渡ってこれまで行ってきた解析手法を拡張して適用した。具体的には、第一原理バンド計算を実行して電子のバンド構造を計算し、最局在ワニエ軌道を構築することで強束縛模型のホッピング積分を求めた。d_<z2>軌道を考慮した強束縛模型に対し揺らぎ交換近似を適用することで電子相関効果を取り込んだ計算を行った結果、転移温度が低い複数の2層系において、dz_2軌道混成がTcを低下させる要因になっていることが分かった。また、得られた結果をフェルミ面形状とTcの相関関係という観点から整理した結果、実験的に観測されるTcとフェルミ面形状の相関関係を良く説明することが分かった。この相関関係は理論的にも実験的にも長年興味が持たれており、重要な成果であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(5 results)