2011 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋島嶼パラオ共和国における文化的景観保全に基づく流域圏マネジメント
Project/Area Number |
11J09458
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯田 晶子 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 流域圏 / 文化的景観 / ランドスケープ / 熱帯島嶼 / パラオ共和国 |
Research Abstract |
本研究では、太平洋島嶼パラオ共和国のバベルダオブ島を事例に、水循環や生態系の基礎的単位であり、熱帯島嶼の生活・文化と密接に関わる「流域圏」に着目し、階層的な空間スケールと歴史的な時間スケールから流域内のランドスケープの構造・機能・変化の体系的な解明を行い、熱帯島嶼の環境の持続的維持を目的としたランドスケープ・プランニングのあり方を考察した。研究の成果は、以下の5つにまとめられる。第一に、流域圏の階層性を踏まえたプランニングの枠組み設定するため、バベルダオブ島の階層的な流域構造を明らかにした。第二に、20世紀初頭に日本軍が作成した詳細な地図を発掘し、地形・傾斜・植生といった土地の自然的条件と人間による土地利用の変遷を統合させ、一定の空間的まとまりを有するランドスケープ単位を抽出し、プランニングのためのデータベースとして整備した。第三に、主要河川の流域における日本委任統治時代の農地開拓やボーキサイト採掘の実態と現在への影響を、土地利用の変遷の解析と生存する開拓者へのヒアリングから明らかとした。第四に、沿岸部の小流域に立地するパラオ人の伝統的集落の文化的景観に着目し、土地利用、植生、資源利用に関する詳細な現地調査から、微地形に即した土地利用、多様な生物資源、人々の生活生業の結果導かれるより微細なランドスケープ単位の集合体として集落の土地利用システムが成立していることを明らかとした。第五に、以上の空間分析に加えて、流域圏の保全管理の現状と課題を整理し、小流域という住民がコントロール可能な空間を基礎として、流域協議会を中心とした多様な主体の相互連携を元に、広域的なランドスケープ・プランニングを行う道筋を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している。約1か月の現地調査を実行し、土地利用・植生のデータベースを完成させ、それをもとにランドスケープ単位の抽出を行った。そして、時間軸を踏まえた階層的なランドスケープ単位を設定し、日本人の開拓地とパラオ人の伝統的集落という2つの対照的な事例をもとに、流域圏における持続的な土地利用のあり方を考察した。そして、多様な主体の相互連携と制度的枠組みを検証し、熱帯島嶼の環境を持続的に維持するランドスケープ・プランニングの可能性を提示することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度設定したランドスケープ単位をもとに流域環境を持続的に維持する土地利用計画を検討していく。その際、ランドスケープ単位の多面的機能評価の実施すること、および、現地のカウンターパート(州政府・研究機関)と協力した参加型計画づくりを行っていくことが今後の課題である。
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