2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09482
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
松本 幸代 (島守 幸代) 学習院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 言語障害 / 言語学 / 吃音 / 特異的言語発達障害 / 日本語 / 言語知識 / 言語処理 |
Research Abstract |
言語障害の研究においては言語学の知見が不可欠であると思われる。しかし、わが国において、言語学の知見に基づいた言語障害研究はほとんど行われていない。本研究の目的は、主に音韻に関わる側面に問題があることが指摘されている吃音という言語障害や、統語や形態に関わる側面に問題があることが多くの研究で報告されている特異的言語発達障害(SLI)などの言語障害を対象とし、日本語を母語とする言語障害児の言語知識・処理の問題を明らかにすることである。 今年度の吃音についての研究は以下の通りである。筆者は、これまでに日本語においては吃音の困難さが核母音から後続する分節素への移行にあるという仮説を提案してきた(Shimamori & Ito,2007,2008;島守・伊藤,2009,2010)。今年度は、核母音からの移行が困難であるのは語頭音節のみなのか、2音節目以降においても当てはまるのかについて検討した。小学校のことばの教室に通級する吃音児21名を対象に非語の音読課題と呼称課題を行った。その結果、核母音からの移行が困難であるのは語頭音節のみであり、2音節目以降の核母音からの移行は、吃音頻度に影響を与えないということが明らかになった。この研究結果を中核とした論文がClinical Linguistics & Phoneticsの2012年9月号に掲載された。 SLIの研究では、SLI児2例の自然発話における格助詞の誤用の特徴について構造格と内在格の視点から検討した。その結果、SLI児においては、聴覚障害児ほど、構造格と内在格の違いに関する知識が獲得されていないことが示唆された。この研究結果をまとめ、音声言語医学に投稿した。採択され、2012年7月号に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は日本語を母語とする言語障害児の言語知識・処理の問題を明らかにすることである。現在までに行ってきた吃音児と特異的言語発達障害児とした研究は極めて順調に進展している。今後は、吃音や特異的言語発達障害以外の障害も対象に加えることにより、様々な障害種の言語の音韻、形態、統語に関わる問題をさらに明らかにする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
言語障害の研究においては言語学の知見が不可欠であるにもかかわらず、わが国において、言語学の知見に基づいた言語障害研究はほとんど行われていない。今後は、これまでに行ってきた学齢期にある吃音児を対象とする研究を継続することにより、吃音児の音韻に関わる問題をさらに明らかにするとともに、幼児期の吃音児の言語発達の問題も検討する。また、これまでに対象としてこなかった吃音以外の障害種の言語の問題も言語学の知見をふまえて検討する。具体的には、知的障害児や聴覚障害児における格助詞の誤用の問題や、自閉症児における受動文の誤用の問題などを検討する予定である。
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