2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09506
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
武内 康則 大谷大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 契丹語 / 契丹文字 / 歴史言語学 / モンゴル諸語 / 解読 |
Research Abstract |
昨年度は、2010年にモンゴル国で発見された碑文についての契丹大字碑文の研究を進めた。契丹語の資料は着実に増えてきてはいるが、十分であるとは言えず、これまでに出土した一つ一つの資料が極めて貴重である。特に、契丹大字の資料は小字の資料と比較して少なく、研究も遅れており新たな資料の出土が期待されている。したがって、当該碑文は非常に貴重な資料といえる。8月にモンゴル国でこの碑文の調査を行い、その結果碑文が記された年代と考えられる個所を解読することができた。その調査や内容の解読について10月1日に国際シンポジウムにて報告を行った。今後研究を進め雑誌論文として発表する予定である。 契丹大字の資料は小字と比較して絶対数が少ないために、単に大字資料を分析するだけでは解読できる範囲が限られてしまうことが研究を進めるうえでの課題と考えられてきた。また、従来は表意文字が主体であると考えられてきた契丹大字であったが、近年の研究によって、実際には多くの表音文字が含まれていることが明らかになった。したがって、大字と小字の同一語表記を比較することによって、より解読の進んでいる小字の音価を対応する大字へと当てはめることで新たに大字の音価の推定が行うことが有効なアプローチとなる可能性がある。この研究を進めるため、昨年度は先行研究における小字と大字の研究成果を再整理し、小字と大字の比較研究の基礎となる同一語表記の同定作業を進めた。研究成果については学会での口頭発表や博士論文の一部としての発表する予定である。 3月には国際ワークショップにおいて契丹文字資料の近年の公開状況および研究の展望について報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的の一つとして、契丹文字の表音システムの解明があるが、現在進めている契丹大字と契丹小字の比較研究はこの目的の達成に大きく貢献するものであると考えており、その作業も進んでいることから、概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
契丹文字資料の解読を進めるには、写真等では判読が困難な資料も多いため一次資料の調査が肝要であると考えている。したがって、近年報告された資料に対する中国・モンゴル・ロシアでの現地調査を予定している。さらに、近年の新資料の報告は当初の予定を越えており、資料の急激な増加に対応するために他の研究者との連携が必要と考えている。国際ワークショップの開催などにより、関連分野の研究者との交流を進め、研究における連携について模索していく予定である。
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