2011 Fiscal Year Annual Research Report
パナマ先住民エンベラの現代史的経験の民族誌―人間と非人間の関係からの記述
Project/Area Number |
11J09520
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
近藤 宏 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | パナマ / 先住民 / エンペラ |
Research Abstract |
今年度は以下の3点から研究を進めた。(1)論文執筆、(2)現地調査、(3)論文執筆の3点である。 (1)論文執筆以下の論文を執筆した。1950年代から現在に至るまでのパナマのエンベラの歴史を、共同体形成のはじまり、パナマに特有の先住民居住区制度、特別区(comarca)制度の導入、その制度の改変といった点に着目し考察した。特に、パナマ国内の政策、応用人類学の発展、他の先住民居住地帯の状況、国際的な開発政策の変化などと関連させることで、様々な制度がどのようにエンベラのもとに導入されたのかを検討した。こうしたやり方を通して、パナマ東部のエンベラの歴史が、ローカリティを作り上げようとする様々な構想、政策を通して、いかに展開していったのかを明らかにした。年度末に刊行された生存学研究センター報告17に掲載された。 (2)現地調査8月から10月までパナマ共和国エンベラ=ウォウナン特別区にて現地調査を行った。目的は狩猟活動と呪術的な医療に関する参与観察、聞き取りである。調査期間中には狩猟についていきながら聞き取りを行うなど、一定の成果をあげることができた、と考えている。それらの聞き取りから見ることのできる、エンベラによる動物との関係性をあらわす概念のあり方は、南米低地先住民研究でみられる語彙と類似性が強いものの、一致するものではなかった。 (3)論文執筆のための考察ここでは、共同体、ローカルなもの、人類学的な現場の認識にかかわる近年の人類学的議論を考察した。今日パナマにおいては、先住民共同体とは単に先住民が生活する場であると同時にさまざまな開発計画の対象にもなっている。こうした状況において、開発計画に備わる自然資源管理主体として共同体を看倣す視点とは別に、人類学が持つ共同体、現場の認識について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査の成果、博士論文構想発表会における議論などを十分に踏まえる必要が生じ、今年度予定していた博士論文の提出を来年度10月に延長したため。とくに後者は、人類学的な議論でもこれまでに検討していなかった領域に由来する議論の考察の必要性を示すものだった。そのために、それらの議論の考察を踏まえたかたちで、本研究を再考することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題のための現地調査は昨年度までにおおむね終えている。残る課題は、現地調査を受けた論文の執筆である。そのために、学会発表に限らず所属研究科の演習等の機会を活用し論文の執筆を随時進める。
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Research Products
(2 results)