2011 Fiscal Year Annual Research Report
金クラスター担持酸化物半導体に基づく光機能デバイスの開発
Project/Area Number |
11J09522
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
古郷 敦史 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 金クラスター / 酸化チタン / 光電変換 / 局在表面プラズモン共鳴 / 金ナノ粒子 |
Research Abstract |
直径が2nm以下、構成原子数が250以下の金クラスター(Au CL)は量子サイズ効果により離散した電子準位を持ち、準位間の電子遷移により可視光および近赤外光を吸収する。金クラスターを担持した酸化チタン(Au CL/TiO2)に可視光や近赤外光を照射すると、金クラスターの励起電子が酸化チタンへ移動する電荷分離に基づき、光電変換や光触媒作用が発現することを我々は見出した。より高効率な光電変換を達成するため、本研究では直径数十nmの金ナノ粒子(AuNP)をAuCL/TiO2電極へ導入した。 25個のAu原子から成るAu25とAuNPを緻密な酸化チタン膜(膜厚6nm)で隔てた電極を作製し、可視光および近赤外光照射下で生成する光電流を測定したところ、AuNPのない電極と比べて可視光照射下では約5倍、近赤外光照射下では約9倍の光電流が測定された。 酸化チタンの膜厚を制御してAu25とAuNPの距離を変化させたところ、膜厚が20nm以上では光電流の増強は見られず、10-20nmの範囲では膜が薄いほど増強度が増加した。この挙動は時間領域差分法(FDTD)によりシミュレーションしたAuNP周囲の局在電場強度の挙動と概ね一致することから、AuNPの局在電場によってAu25の光励起が促進され、光電流が増強したと結論付けることができた。一方で、酸化チタンの膜厚が10nm以下の場合にはAu25とAuNPの双極子が相互作用することにより、Au25の励起電子が失活する逆エネルギー移動の効果により増強係数は飽和した。 以上より、本研究ではAuNPによりAu25/TiO2の光電流を増強することに成功した。また、光電流の増強においてAuNPの局在電場と逆エネルギー移動の2つの効果が作用することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の狙い通りAu25担持酸化チタンの光電流を増強することができた。FDTD法で計算した局在電場強度が光電流の増強係数の挙動と概ね一致したことから、AuNPの局在電場の効果を明確に証明することができた。また、逆エネルギー移動が関与することなど新たな知見が得ることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化チタン上のAu NPは局在表面プラズモン共鳴による光吸収に基づいて、電子を酸化チタンに注入する電荷分離を起こす(プラズモン誘起電荷分離)。しかし、Au NPは電子バンド構造を持つことから、励起準位が特定できず、電荷分離の機構が明らかになっていない。本研究で用いたAu CL担持酸化チタンの光電流増強の系を応用し、大きなAu CLを担持した酸化チタンが生成する光電流がAuNPによって増強されるかどうか検討する。Au CLのサイズを大きくしていくと離散した電子構造が電子バンド構造に近づき、プラズモン誘起電荷分離の機構について新たな知見を得られることが期待される。また、酸化チタンに担持したAg CLが光照射下で、電荷分離に基づきイオン化されて溶解することから、Ag CLの溶解をNPで増強することで、電場増強効果のイメージングを行う。
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Research Products
(3 results)