2012 Fiscal Year Annual Research Report
金クラスター担持酸化物半導体に基づく光機能デバイスの開発
Project/Area Number |
11J09522
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
古郷 敦史 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 金クラスター / 酸化チタン / 可視光光電変換 / 可視光応答光触媒 |
Research Abstract |
バルクや直径~3nm以上の金属ナノ粒子(NP)は電子バンド構造を持つのに対し、直径~2nm以下、粒子を構成する原子の数が~250個以下の金属クラスター(CL)は、量子サイズ効果に基づき離散した電子構造を持つため、準位間の電子遷移に基づいた可視光吸収を示す。金属クラスターを担持した酸化チタン(CL/Ti02)に可視光や近赤外光を照射すると、金クラスターの励起電子が酸化チタンへ移動する電荷分離に基づき、光電変換や光触媒作用が発現することを我々は見出した。CLの電子構造はそのサイズに依存して変化することから、CL/Ti02の光機能においてもCLサイズの効果が現れると考え、検討を行った。 Au25、Au38、Au102を合成し、各CLを担持したTi02の光機能を調べた結果、CLサイズが大きいほど長波長の光に対して光電流応答を示すことがわかった。これは、CLサイズが大きいほど電子準位が密に分布するため、HOMO-LUMOエネルギーギャップが小さく長波長の光を吸収するためと考えられる。一方でCLが小さいほど光電流を生成する内部量子収率が大きくなることがわかった。さらに、電子ドナーを変えて光電流を検討した結果、CLサイズが小さいほど強い光触媒酸化力を示すことがわかった。以上の結果から、CLのサイズを変えることによって、CL/Ti02が利用できる光波長、光触媒酸化力、光電流の生成効率を制御できることを明らかにした。電子ドナーの酸化還元電位がCLの基底準位よりも負である場合にのみ、ドナーからCLへ電子移動が行われることから、酸化できたドナーおよび酸化できなかったドナーの電位から各CLの電子構造解析も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
サイズに依存して金属クラスターの電子構造が変化するため、クラスター担持酸化チタンの光機能にクラスターサイズの効果が現れることは当初より予測していたが、利用できる光波長域以外に光触媒酸化力や光電流の生成効率などにも違いがあることが明らかになったのは予想以上の成果である。また、Au25、Au38、Au102いずれのクラスターを用いた場合にもヨウ化物イオンの存在下で光電流を生成することがわかり、今後の研究推進に有益な情報となった。
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Strategy for Future Research Activity |
Au25を担持した酸化チタン電極(Au25/Ti02)に直径数十nmの金ナノ粒子(Au NP)を導入することで光電流が増強されるということを前年度に明らかにしたため、今後はAu25以外にもAu38、Au102を用いることでAu cL/Ti02の光電流増強におけるCLサイズの効果を調べることができる。 また、光電変換および光触媒以外への光誘起電荷分離の応用も検討する。金よりも酸化されやすい銀クラスター(Ag CL)を酸化チタンに吸着させ、可視光を照射すると光誘起電荷分離が起こる。電子ドナーが存在しない条件では、Ag CLから酸化チタンへの電子移動に伴って生成した正電荷によりAg CLが酸化溶解すると考えられ、CLサイズの制御を検討する。
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Research Products
(5 results)