2012 Fiscal Year Annual Research Report
がんの発生と進展に関わる新規脂質キナーゼの機能解明
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11J09537
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
浅沼 研 秋田大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イノシトールリン脂質 / がん / PIK3C3 |
Research Abstract |
本研究の目的は、哺乳細胞におけるPI3P産生酵素PIK3C3とがんの関係を明らかにし、がん治療に役立つ知見を得ることである。 がんにおけるPIK3C3の機能解析は、既に発がんモデルマウスとして確立されているT細胞特異的PTEN欠損マウス(以下、PTEN欠損マウス)と、同じくT細胞特異的にPTENとPIK3C3の両分子を欠損する二重欠損マウス(以下、二重欠損マウス)とを比較する事で行った。PTEN欠損マウスは既に報告されている通り、生後200日齢以内に全例がT細胞性リンパ腫を発症し死亡したが、二重欠損マウスにおいては発がんが抑制され、生存率の改善を認めた。PTEN欠損マウスにおいては胸腺の腫大がみられたが、二重欠損マウスにおいては胸腺の腫大が抑制されていた。また、PTEN欠損マウスにおいては胸腺細胞数が増加していたが、二重欠損マウスにおいては胸腺細胞数が減少していた。[3H]thymidineの取り込みにより細胞増殖能を解析したところ、PTEN欠損マウスにおいては細胞増殖能が亢進していたが、二重欠損マウスにおいては細胞増殖能の亢進から回復していた。更に、胸腺の細胞破砕液を調製し、癌に関与すると考えられている各種タンパク質のリン酸化状態を解析した。PTEN欠損マウスにおいては原癌遺伝子産物であるAktのリン酸化が亢進していたが、二重欠損マウスにおいては、Aktのリン酸化亢進から回復していた。 以上の実験結果より、PTEN欠損による発がんがPIK3C3欠損により抑制される事、また、その機序としてPIK3C3欠損がAktのリン酸化亢進を抑制している事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りPIK3C3とPTENの二重欠損マウスを作製し解析を行うことにより、PTEN欠損によるがんをPIK3C3欠損が抑制することを遺伝学的に明らかとした。
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