2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09546
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 丈司 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員DC2
|
Keywords | 膜交通 / シロイヌナズ / RAB GTPase / 発生 / 根 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
Rab GTPaseは、GTP結合型とGDP結合型をサイクルする分子スイッチとして膜融合を制御している。なかでもRAB5は、エンドサイトーシス経路で多様な機能を担うことが動物では明らかとなっている。一方、植物のRab5が器官、個体レベルにおいて果たす役割の研究はほとんどなされていなかった。そこで、植物のRab5の発生における役割を解明することを目的とし、シロイヌナズナのRAB5活性化因子であるVPS9aの変異体vps9a-2の表現型を解析している。 変異体では静止中心におけるSHORTROOT、SCARECROWの発現の有無が逆転していた。静止中心が誤って中心柱細胞に分化している可能性を検証したところ、分化は起きていなかった。オーキシンが静止中心に最も多く蓄積することは、PIN3、PIN4、PIN7によって制御されている。変異体において蓄積位置がずれることから、これらPINタンパク質の細胞内局在の異常を推測した。局在に関する異常はなく、遺伝子の発現領域の異常が見られた。これらのことからRAB5がSHORTROOT、SCARECROWだけでなくPIN3、PIN4といった発生における重要な複数の遺伝子の発現領域の調節に関与することが明らかになった。細胞内膜交通と遺伝子発現領域の関係性を示唆する興味深い結果である。 RAB5はエンドソームに局在するのに対し、RAB7は液胞膜に局在して液胞輸送に関与する。発生におけるRAB7の機能解析を開始した。酵母において複合体の状態でRAB7の活性化因子として働くSAND1/MON1とCCZIのシロイヌナズナにおけるホモログの変異体系統を確立した。野生型ともvps9a-2変異体とも異なる表現型を示した。発生におけるRAB5、RAB7特異的な機能、両者に共通する機能、また細胞・分子レベルでの機能解析も同時に進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
RAB5の活性化因子であるVPS9aの変異体の表現型解析を進めた。計画通りにオーキシン輸送体の局在解析を行い、PIN2の液胞への輸送にRAB5が必要であることを明らかにした。さらに、PIN3やPIN4の局在ではなく発現領域の調節にRAB5が関与するという興味深い結果が得られた。 研究対象を、酵母においてRAB7の活性化因子であることが報告されているSAND1/CCZ1複合体にも拡大した。クローニング、GFP融合形質転換体の作出、変異体系統の確立に成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
RAB5の機能解析を引き続き行うとともに、当初の研究計画にはなかったRAB7の機能解析を重点的に進める。植物におけるRAB7の機能については細胞・分子レベルにおいてもまだ明らかにされていないことが多いため、解析対象を器官・個体レベルから細胞・分子レベルにまで拡大する。
|