2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09564
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Research Fellow |
中住 友香 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC1)
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Keywords | 単分子接合 / 光化学 |
Research Abstract |
金属電極間を単一分子が架橋した単分子接合は、単分子エレクトロニクスへの応用が期待され注目を集めている。実際に単分子トランジスタや、フォトクロミック分子を用いた単分子スイッチングなどが報告されている。一方、このような機能をもつ分子は複雑な構造を持つことが多いので、非弾性トンネルスペクトル(IBTS)などを用いた構造決定が難しく、そのため単分子接合における機能の発現機構の解明が困難であった。小分子を用いた単純な単分子接合に対しIETS計測を適用し、機能発現前後の単分子接合の構造を決定することは重要である。そこで、本研究では単純なハロゲン化炭化水素であるcis-1,2-ジクロロエチレン(DCE)に注目した。この分子は、Pt(111)面上に吸着した状態で紫外光(200nm~)を照射すると、C-Cl結合が開裂し、diσ/π結合したアセチレンが生成することが知られている。cis-1,2-ジクロロエチレンを用いた単分子接合で、光化学反応の進行が期待できる。そこで本研究では、cis-1,2-DCE雰囲気下のPt接合の伝導度・IETS計測を行い、光照射前後での単分子接合の構造変化について検討を行った。 Pt接合の場合は1.5G_0(2e^2/h)にPt単原子接合に対応した伝導度を観測した。in situにてcis-1,2-DCEを導入したところ、1G_0付近の幅広い領域の伝導度成分が観測され、さまざまな構造ができることが示された。分子の架橋状態を決定するために、IETS計測を行った。cis-1,2-DCE雰囲気下のPt接合のIETSでは、50meV付近に振動モードが観測された。この振動モードのエネルギーはPt(111)面上に吸着したcis-1,2-DCEとPt間の振動モードのエネルギー(55meV)とよく一致している。よって、今回得られた振動モードは、接合を架橋したcis-1,2-DCE分子由来の振動モードと考えられる。 続いて、cis-1,2-DCE雰囲気下のPt接合に可視・紫外光(200nm~)を90分間照射したところ、光照射前とは異なり、1G_0の伝導度を持つ構造が選択的に形成されることが示された。光照射後にもIETS計測を行ったところ、25~75meVの広い領域に振動モードが観測され、光照射前とは異なる挙動を示した。光照射前後において伝導度・IETSが異なることから接合に吸着した分子が光によって反応することが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光照射前後の単分子接合の構造決定を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年に得られた結果をもとに実験条件の最適化を行う。分子の伝導度や反応の効率・可逆性などをもとに機能発現に優れた分子の探索を行う。光の波長や強度、偏光方向などのパラメーターを変化させることで物性制御に最適な条件を得る。得られた条件と単分子接合の伝導度・IETSの情報を総合的に解析し、単分子の伝導特性の制御メカニズムの解明を行う。
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Research Products
(5 results)