2011 Fiscal Year Annual Research Report
正20面体クラスター固体の新奇な相転移に関する研究
Project/Area Number |
11J09596
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西本 一恵 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 準結晶 / 正20面体クラスター / 構造相転移 / 電子回折 |
Research Abstract |
本研究は、希土類元素Mによる正20体クラスター内に多面体を内包する金属合金(Cd6Yb,Cd6Ca)において発見された、内包原子群の配向の規則-不規則相転移という新しいタイプの構造相転移の機構を調べることを主目的としている。今年度は、クラスター中心にCd4面体を内包するCd6M立方晶群の中で、まだ相転移の有無についてしらべられていないCd6M(M=Sr,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Lu)について相転移の有無を調べることで、一連のCd6M立方晶群での本相転移の有無を明らかにし、クラスター中心の4面体に対する外側のM原子の役割について知見を得ることを目的とした。試料作製は、100~300h熱処理を施して結晶性を良質化した試料を作製し、20K~300Kでの低温TEM観察や電気抵抗率測定を行いて調べた。それによると、Cd6M立方晶群の中でもCd6M(M=Sr,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy)が100K付近で構造相転移を起こすが、Cd6M(M=Ho,Er,Tm,Lu)が20K以上では相転移を起こさないことがわかった。これにより、正20面体クラスターを構成するM原子の大きさが小さい場合、すなわち正20面体クラスター内の空隙の大きさが小さいと規則-不規則相転移が抑制されることをを見出した。また、今年度は同じ4面体を内包する正20面体クラスターを持ち、Cd6Mと同種の規則-不規則相転移が起こることが期待されるCd5.7Yb及びZn88Sc12準結晶においても、高温TEM観察を用いて構造相転移の有無の探索を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、放射性元素を化合物を除く16種のCd6M立方晶群において、電気抵抗率測定及び低温その場TEM観察を行った。それにより、Cd6Mの中でM=Ca~Dyにおいて低温で超格子反射の生成と、電気抵抗率に飛び状の異常を観察し、構造相転移を起こすことを明確にし、M=Ho~Luが相転移を起こさないこと解明した。これにより、クラスター中心の4面体の配向規則化には、順子の大きさ、すなわち外側のM正20面体内の空隙大きさが密接に関わっていることがわかってきており、概ね研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度は相転移を起こすことがわかったCd6Mの、低温での超格子構造を詳細に調べる。具体的には、電子回折法により空間群の決定をし、その空澗群を元にXRD回折などでクラスター内の4面体の原子位置の決定を行う予定である。空間群の決定時の電子線ダメージを低減するため、低加速度の電子線でなるべく短時間で、制限視野電子回折像及び収束電子回折像を観察する。また、転移点付近で温度を調整し、高分解能像観察などを行い、相転移前後のドメイン構造がどのように発達するかを解明したいとも考えている。
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[Journal Article] Nonmagnetic ground states and phase transitions in caged compounds PrT 2 Zn 20 (T=Ru, Rh and Ir)2012
Author(s)
T Onimaru, K T Matsumoto, N Nagasawa, Y F Inoue, K Umeo, R Tamura, K Nishimoto, S Kittaka, T Sakakibara, T Takabatake
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Journal Title
SCES2011 Proceedings
Volume: (掲載確定)
Peer Reviewed
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