2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトゲノム遺伝子間領域から発見された新規タンパク質AGD3の機能解明
Project/Area Number |
11J09635
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
福田 牧葉 東京工業大学, 生命理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヒトゲノム / 機能未知ゲノム領域 / 低分子量タンパク質 / 天然変性タンパク質 / シグナル伝達因子 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ヒトゲノムの機能未知な転写領域から発見した新規タンパク質遺伝子AGD3の機能の解明である。AGD3遺伝子は、脊椎動物種間で保存された63アミノ酸長の短いタンパク質を翻訳するが、そのタンパク質機能は全く分かっていない。本研究ではヒト培養細胞を用いて、AGD3タンパク質の細胞内機能を明らかにすることを第一目的とした。 初年度は、細胞内でAGD3と結合するタンパク質の探索を進めた。結合タンパク質の機能が分かっている場合には、AGD3も同様の機能、またはその制御に関わっている可能性が高いからである。はじめに、抗AGD3ポリクローナル抗体を用いてAGD3を含む複合体の免疫沈降を試みた。しかしながら、抗体への非特異的結合に由来するタンパク質が多く検出され、AGD3と特異的に結合するタンパク質の同定には至らなかった。そこで、マウス抗AGD3モノクローナル抗体の作製を行い、より抗原特異性の高い2種類の抗体産生細胞を単離した。その後これら抗体を用い、免疫沈降条件の最適化を進めている。 一方で、AGD3の発見から機能解析に至る過程で確立した方法論を活かし、機能未知のヒトゲノム転写領域から新たに8種類の新規タンパク質遺伝子候補を抽出した。そして、それらの結合タンパク質を免疫沈降および質量分析により同定した結果、69アミノ酸長の新規タンパク質が、プロテインキナーゼA(PKA)の調節サブユニットと結合することが明らかになった。この発見により、ヒトゲノムの機能未知転写領域からは、AGD3の他にも多様な機能を有する低分子量タンパク質が翻訳されていることが示唆された。今後、遺伝子ノックダウン実験とその表現系解析などを行い、これら低分子量タンパク質の機能を明らかにすることで、機能未知転写領域の生物学的意義の理解に繋がることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、AGD3の相互作用タンパク質の同定を主な目的としていたが、実際にAGD3と特異的に相互作用するタンパク質の同定には至らなかった。しかしながら、目的達成のために作製したモノクローナル抗体は、免疫沈降実験のみならず今後のAGD3機能解析研究に有力であると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の2つのアプローチを並行して遂行し、AGD3の細胞内機能の解明を達成する。 1.相互作用タンパク質の同定 2.siRNAによる遺伝子ノックダウンと、細胞の表現系評価 1.に関しては、初年度の研究において最適化した免疫沈降法を利用してAGD3とその相互作用タンパク質を共沈降させる。2.については、これまでの観察結果からAGD3は細胞内シグナル伝達の調節に関わっている可能性が高いと考えられるため、シグナル調節を行うタンパク質の機能に対する影響を調べる。そして、双方の知見を合わせ考え、AGD3タンパク質の機能発現メカニズムの解明を目指す。
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Research Products
(2 results)