2012 Fiscal Year Annual Research Report
貸付と給付の社会福祉理論--ライフプランをめぐる資源移転政策の研究
Project/Area Number |
11J09654
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
角崎 洋平 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 福祉的貸付 / ライフプラン / 伴走的支援 / 脆弱性 / 世帯更生運動 / 生業 / 生活協同組合 / 多重債務者 |
Research Abstract |
1.福祉的貸付についての歴史的研究 報告者は以下のことを確認した。(1)世帯更生運動当時の福祉的貸付実践では,生活保護受給者層も含めた多様な階層に対する伴走的な生業・生活支援が実施されていたこと、(2)こうした支援が奏功したのは零細企業が起業しやすい経済市場の存在が前提であったこと,(3)もとは生業自営を促すためのものであった貸付支援が現在では「正規」の雇用に就かせるための貸付支援に転換してきていること,である。またこれらを踏まえて,戦後直後から現代まで共通する生活基盤構築支援としての福祉的貸付の意義を確認し、今日生活困窮者支援政策として注目されているパーソナルサポートサービスとの異同も指摘した。 2.現代における福祉的貸付の実態調査 現代の福祉的貸付実践事例を確認するために,多重債務者など金融から排除された個人へ貸付をしている生活協同組合系機関へのインタビュー調査を実施し,社会政策学会で報告した。これらの貸付支援の対象とされる借手は、自己の長期的なライフプランに基づき返済金額を設定し、返済スケジュールを立てたとしても、その後の景気変動や家族の病気などによって、その変更を余儀なくされることが多い人々である。生協系機関は、そうした借手の状況に配慮しつつ、複数回に渡る返済条件の見直しに応じるなど、柔軟な債権管理を実施していることを確認した。 3.貸付が福祉的であるための条件の提示 報告者は、1・2の研究に基づき、貸付が「福祉的」であるための条件を提示した。第1に、貸手が、借手の完済までの期間中、借手のライフプランに伴走してサポートし続けること、である。第2に、借手が想定外の困難に直面し、当初想定したライフプランの進捗に弊害が発生した時、それに配慮した柔軟な債権管理を実施すること、である。こうした結論は、マイクロクレジットの経済学的研究よりも、〈脆弱性〉を抱える借手の現実に準拠した福祉的貸付機能の条件を提示している。
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