2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09740
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
国分 航士 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日本政治史 / 日本史 / 伊藤博文 / 伊東巳代治 / 帝室制度調査局 / 天皇 / 皇室 / 宮中 |
Research Abstract |
本研究は、「天皇親裁」を理念とした明治国家の政治過程において、各政治主体が天皇・皇室を如何に立憲制の文脈に定着させようとしたのか、を考察するものである。平成23年度は、明治後期において皇室制度に関する諸法令の整備に関与した帝室制度調査局(伊藤博文総裁、伊東巳代治副総裁)の活動とその影響を明らかにするために、当初の研究計画に則りつつ、国立国会図書館憲政資料室、国立公文書館、宮内公文書館などの諸機関に所蔵されている未刊行資料の調査を実施した。また、公刊私文書の読解、新聞・雑誌の関連記事の渉猟を行った。 これらの作業を踏まえて、以下の知見を得ることができた。憲法と皇室典範の法的関係を視野に入れた上で、帝室制度調査局は、截然とした区分が必ずしも成立しない宮中・府中の関係性の再確認を促した。帝室制度調査局の作成した代表的な法令である公式令の制定過程から、皇室令と勅令の規定の修正のように、各政治主体の多様な宮中・府中関係に対する認識が確認できる。そして、こうした葛藤は、大正期において、天皇の即位礼と大嘗祭という大礼の事務を担当する大礼使の官制をめぐる論争として再燃した。この大礼使官制問題では、皇室の事務と国家の事務の関係は如何にあるべきか、換言すれば、「天皇」と「国家」の関係性、そして「宮中」という言葉の解釈が論議されていた。特に「宮中」という言葉の解釈の多元化は、単に「府中」と対比される非政治的領域を意味するのではなく、内閣や議会などを超越した「挙国一致」を実現する政治領域として「宮中jが解釈される素地を生んだと考えられる。 なお、以上の研究成果の一部については、2011年11月6日、史学会大会(日本史部会近現代)において、「明治後期皇室制度改革と大正初期の「宮中」-公式令制定と大礼使官制問題-」と題した報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度から公開が始まった宮内公文書館の所蔵資料によって、これまで知られていなかった宮内省・宮中の慣習や会議の議事を確認できたものの、その資料群としての性格の理解は十分ではなく、その意義づけができていない。それに伴い、宮内官僚や宮中側の持っていた天皇・皇室への認識の解明があまり進展していないため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、各機関・個人蔵の資料調査を継続する。特に今後は、帝室制度審議会などの大正期の皇室制度の法整備についての分析と、有賀長雄、一木喜徳郎などの皇室制度に関与した法学者の著作の整理に重点を置く。その際には、牧野伸顕、関屋貞三郎などの宮内省首脳部だけではなく、これまで重視されてこなかった、森鴎外(宮内省図書頭)や中堅の実務官僚層(杉栄三郎など)の個性も把握した上で、分析を加えたい。
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