2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J09740
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
国分 航士 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日本近現代史 / 帝室制度審議会 / 帝室制度調査局 / 伊東巳代治 / 王室法 / 宮中 |
Research Abstract |
平成24年度は、大正期の天皇・皇室制度関係の諸法令の調査・整備事業に関して、伊東巳代治を総裁とする帝室制度審議会の活動と影響を主眼に置きつつ、考察を加えた。そこで、(1)帝室制度審議会関係の資料、(2)当該期の宮内省首脳部・宮内官僚の旧蔵文書、(3)皇室制度関係の法整備に関与した人物の著作など、の渉猟を中心的な課題とし、国立国会図書館憲政資料室、国立公文書館、宮内公文書館、東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター原資料部などの諸機関での調査を前年度と同様に実施した。 私文書では国立国会図書館憲政資料室所蔵「牧野伸顕関係文書」、「関屋貞三郎関係文書」、「倉富勇三郎関係文書」の読解に重きを置いた。特に、戦前期に宮内大臣・内大臣を務めた牧野伸顕の発信書簡には、それぞれの時局における状況判断や感想が散見され、既に刊行されている『牧野伸顕日記』の記述と対応させることで牧野への理解を深化させた。 さらに、宮内公文書館所蔵の資料の調査によって、帝室制度審議会関係だけではなく、これまで未発見であった帝室制度調査局関係の書類を発見した。帝室制度調査局・帝室制度審議会の活動の詳細は、本研究にとって不可欠な前提であり、これによって、前年度までの研究以上に、帝室制度調査局内部の議論や法令の作成過程を理解することができた。他方、そのために、学術雑誌に投稿準備を進めていた研究論文の修正を余儀なくされ、帝室制度審議会についても、皇室裁判令などといった、帝室制度調査局において原案の作成がなされた法令の制定過程を明らかにしたに留まった。しかしながら、明治立憲制における天皇の位置づけ、君主の果たした政治的な統合機能などについて得られた研究成果の一端は、書評という形ではあるが公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宮内公文書館の所蔵資料の調査を進める中で、帝室制度審議会関係だけではなぐ、帝室制度調査局関係の書類も多く発見することができた。これによって、本研究にとっての資料上の障害が軽減し、当初の研究計画以上に詳細な分析が可能となった。しかし資料の全体像や現存に至るまでの経緯などを本年度は解明するには至らず、さらに資料の発見によって、投稿予定だった学術論文の一部修正を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
宮内公文書館での資料調査を継続すると共に、他機関で収集した公文書・私文書との関係を考察する。その上で、帝室制度調査局・帝室制度審議会が関与した各法令の制定過程を明らかにし、昭和期における天皇の統合機能や日本国憲法制定過程を視野に入れ、1、2年目の研究成果の長期的な意義づけを行なう。
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