2012 Fiscal Year Annual Research Report
宮廷儀礼参列者の分析に基づく日本古代国家による蝦夷統制過程の研究
Project/Area Number |
11J09757
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河原 梓水 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 蝦夷 / 同化 / 夷狄 / 良人=王民共同体 / 化外の三区分 |
Research Abstract |
本研究は、古代日本における蝦夷を主たる研究対象としながら、国家の支配構造と統治理念を問い直すことで、新たな古代国家論・王権論を提起することを目指すものである。具体的には、8~9世紀の国家による蝦夷の統制過程として、宮廷儀礼・公地公民制・官位制・身分秩序等への蝦夷の参入過程等を分析し、蝦夷の存在意義から国家の支配構造とその前提と身分秩序を明らかにすることを目指す。本年度においては、前年度から検討を進めていた古代国家における夷狄の存在意義についての研究を取りまとめ、「古代日本における夷狄の同化―蝦夷身分の再検討を通じて―」と題して国際学会である日韓次世代学術フォーラム、第9回国際学術大会において口頭報告した(査読付)。本論文は、古代史研究において多くの先行研究者が依拠する石母田正氏のいわゆる「東夷の小帝国論」・「良人=王民共同体論」(石母田正「天皇と「諸蕃」」、同「古代の身分秩序」『日本古代国家論』第一部、岩波書店、1973年)について再検討し、古代国家における帝国構造とそれに伴う身分秩序を根本から定義しなおすことを目指したものである。考察の結果、従来排除されることによって内部の結束を高めるために利用されたとする夷狄は、逆に内部に包摂・存在し続けることで華夷思想に基づいた身分秩序に寄与する、という結論を得た。本論は蝦夷だけでなく、隼人や渡来人についても扱っており、古代国家の身分論・王権論の進展に大きく寄与するものと考える。 この研究成果と、前年度までの研究成果をとりまとめ、「古代国家の身分秩序と統治理念」と題した博士論文を執筆し、9月20日に提出予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はおおむね当初の計画通り論文を公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も本年度と同様、研究計画に基づき進めていく。まずはこれまでの研究成果を博士論文としてとりまとめ学位を取得する。その後、博士論文中の未発表原稿を論文としてとりまとめ、順次査読付学会誌に投稿する。
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