2011 Fiscal Year Annual Research Report
ソロモン諸島マライタ島の海上居住実践とその現代的動態に関する場所論的比較民族誌
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11J09761
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
里見 龍樹 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | メラネシア / ソロモン諸島マライタ島 / ラウ/アシ / 海上居住 / 場所・空間 / カストム / 葬制 / 漁撈 |
Research Abstract |
メラネシア地域のソロモン諸島マライタ島北部に住む「海の民」ラウまたはアシと呼ばれる人々は、「人工島」と呼ばれる世界に類例を見ない海上居住を今日まで実践してきた。本研究は、この独自の居住形態に関する文化人類学的な調査・研究を通じ、90年代以降の人類学で活発に議論されてきた場所性や移住・居住の主題に関し、新たな理論的・民族誌的知見を提示しようとするものであり、平成23年度を通じ、当初の計画に従って着実に研究を進め、成果を発表してきた。 年度はじめには、平成20~21年に約12か月間に渡って行った現地調査の知見に基づき、ラウ/アシにおける独特の移住伝承を、主としてメラネシアの他地域との比較に基づき考察する論文を発表した。次いで5月には、かつて盛んに論じられながらその後議論が閉塞状態に陥っている、オセアニアにおける「カストム」(文化的伝統)概念について、近年の文化人類学における「生成」の概念に関する理論的展開を援用しつつ、ラウ/アシの事例に即して再論する口頭発表を行った。 その後6~10月には、当初の計画に従い、4か月間に渡りソロモン諸島マライタ島および首都ホニアラで現地調査を行った。今回調査では、国立文書館における植民地時代の文書の探索・閲覧や、海上居住と関連したラウ/アシにおける独自の葬制・墓制とその変容についての聞き取り、GISソフトウェアとGPS端末を活用したラウ/アシの漁携活動についての実証的検証などを重点的に行った。帰国後には、とくにラウ/アシの伝統的葬制とその変容という主題に関して、調査で得られた知見をそれぞれ異なる視角から分析する口頭発表を複数園行った。当該年度中における研究成果はいずれも、ラウ/アシという個別事例に基づき、現代の文化人類学における理論的展開を批判的に受容し発展させる可能性を示すものと自負している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記した「研究の目的」および「実施計画」の内容は、いずれも当初の予定通りに達成された。加えて、平成23年度中の文献研究を通じ、近年の文化人類学における「自然」概念の再問題化など、新たな主題との結び付きも見えてきた。当該研究は、当初の計画・期待を上回る展開を見せつつあるものと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度中の現地調査に基づく研究成果を、国内外における学会発表や雑誌論文のかたちで、引き続き積極的に発表する。
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Research Products
(5 results)