2011 Fiscal Year Annual Research Report
上部対流圏下部成層圏におけるオゾン同位体比の3次元グローバル観測
Project/Area Number |
11J09766
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Research Fellow |
佐藤 知紘 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | オゾン同位体 / 成層圏対流圏大気交換 / 衛星観測 |
Research Abstract |
気候変動の理解にとって、成層圏対流圏大気交換の実態を把握することは重要である。対流圏と成層圏とで異なる傾向を持つオゾン同位体比は、大気輸送過程のトレーサーとして用いられる。本研究では、2009年9月に打ち上げられた超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)の観測データを使用し、上部対流圏下部成層圏(UT/LS)のオゾン同位体比を3次元で観測することを目的とする。 本年度は、まずはSMILESのオゾン同位体比の観測精度の検証を行った。SMILES観測では、オゾンの存在量をサブミリ波帯のスペクトルから反転解析によって導出するため、導出結果には原理上測定ノイズ以外にも解析によって誤差が生じる。また、実験室実験とは異なり、同じ時刻、場所での繰り返し測定はできない。よって、観測データ誤差の詳細な分析はとても重要となる。観測確度の検証で最も有効な手段は、他の観測結果と比較することである。本研究では、確度において信頼性の高いカナダのACE/FTS測器の観測データと比較した。その結果、SMILESの方がACEよりも高度約30~50kmにおいて導出されるオゾン同位体の存在量が20%程度低かった。この原因を調べるために、シミュレーションによって観測スペクトルを模擬し、そのスペクトルを反転解析することで解析内に生じる誤差を見積もった。その結果、原因がSMILESの解析で使用する分光データにあることを突き止めた。現在は、現存する反転解析アルゴリズムをオゾン同位体比の解析に特化し、確度の議論で重要となる系統誤差を少なくすることを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衛星観測データを扱う際には、その精度、確度の議論が大変重要となる。この1年を通して、SMILESのオゾン同位体の観測データを他の観測データと比較し、SMILESの解析側にある問題点を洗い出すことに成功したことは、重要な進歩と言える。一方で、反転解析をオゾン同位体比に特化する作業が完了していないため、自己評価は(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で、SMILESを用いたオゾン同位体比観測の精度、確度については議論することができた。来年度からは、この結果を下に反転解析アルゴリズムをオゾン同位体比に特化する工程に移る予定である。そのアルゴリズムを使ってSMILESの全観測データの解析を行い、オゾン同位体比のグローバルマップを作成する。
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Research Products
(4 results)