2012 Fiscal Year Annual Research Report
上部対流圏下部成層圏におけるオゾン同位体比の3次元グローバル観測
Project/Area Number |
11J09766
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 知紘 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | オゾン同位体比 / 大気化学 / リモートセンシング観測 |
Research Abstract |
気候変動の理解にとって、成層圏対流圏大気交換の実態を把握することは重要である。対流圏と成層圏とで異なる傾向を持つオゾン同位体比は、大気輸送過程のトレーサーとして用いられる。本研究では、2009年9月に打ち上げられた超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)の観測データを使用し、上部対流圏下部成層圏(UT/LS)のオゾン同位体比を3次元で観測することを目的とする。 本年度は、そのデータを使用してオゾンが持つ酸素同位体比([^<18>O]/[^<16>O])の成層圏における日変化を求めた。その結果、昼と夜とで同位体比に差が見られた。それと並行して、昨年度求めた同位体毎のSMILES観測データが持つ誤差を下に、同位体比が持つ潜在的な誤差を調べた。その結果、スペクトル強度の非線形性から生じる誤差が無視できない程大きいことが分かり、これは[^<16>O]の算出に特に大きく影響するため、同位体比では系統的に大きい誤差が乗ってしまうことを突き止めた。 そこで、スペクトル強度の非線形性から生じる誤差を最小にする新しい解析手法の開発に着手した。この非線形性は、スペクトル強度が大きいものほど大きくなる。現状のデータでは、^<16>O^<16>O^<16>Oの算出には特に強度の大きい遷移を使用しており、かつ他のオゾン同位体の存在量の算出はこの^<16>O^<16>O^<16>Oの結果を反映して行われている。つまり、^<16>O^<16>O^<16>Oが持つ誤差が他のオゾン同位体存在量の算出結果にも誤差を生じてしまう。新しく開発した解析手法は、この段階的にステップを踏む解析方法を一新し、各オゾン同位体を独立に解くことで、誤差伝播を少なくし、同位体比に乗る誤差を最小にするように設計した。最終年度は、その新しい解析手法を使ってSMILESの全観測スペクトルを再解析し、その結果を用いてオゾン同位体比の2次元、3次元分布を導出する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度目標としていた、オゾン同位体比にSMILES観測データの反転解析アルゴリズムを開発することを終え、これまでよりも観測データの精度・確度を高くすることができた。これは大きな進展と言える。 一方で、まだ解析が処理している最中であり、満足できるデータを作ったと断言はできないため、達成度は(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
上部対流圏から下部成層圏では圧力が高く、スペクトルの独立性が悪く、十分な精度を持つデータの算出が困難であった。このため、主な研究対象高度領域を中部成層圏から下部中間圏に変更した。オゾン同位体比の観測結果は現在高度40km程度までしかなく、それ以上高い高度での観測例はない。上部成層圏から下部中間圏における観測が成功すれば、世界初の結果となる。 今後は、新しい反転解析手法によって処理されたデータを用いて、高高度でのオゾン同位体比がどうなっているのか、さらにはその日変化等を算出していく予定である。
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