2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代中国の伝染病対策―伝統医学と西洋医学の相互作用に着目して
Project/Area Number |
11J09801
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
曹 貞恩 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 中国医療伝道協会 / 博医会 / 医療宣教師 / 中華医学会 / 基督教 / 中国近代史 / 医療史 |
Research Abstract |
本年度には中国医療伝道協会の役割や変化、中華医学会との合併について考察した。 1)平成23年6~7月に香港や台湾において史料調査を行い、地方志や档案史料、宣教師関連のマイクロフィルム史料などを収集した。 2)中国医療伝道協会は医療伝道や医学生教育、医学用語翻訳などの事業を活発に行い、近代中国の社会や医療方面に大きな影響を与えていた。本研究では中国医療伝道協会の初期活動を分析し、中国医療伝道協会を通し、医療宣教師間の意見の交換・提案が可能であったことを明らかにした。協会は、中国だけではなく、本国や諸外国の医療関係者との情報交流においても大きな役割を果たした。とくに医学用語の統一を重視し、統一された用語に基づいて教科書を編纂するなど、中国での西洋医学教育に一貫性を求めたことは大きく評価できるであろう。史料としては、東洋文庫にある『中国医療伝道雑誌(The China Medical Missionary Journal)』を主に参考にした。 3)中国医療伝道協会が中華医学会に合併されるまでの過程を考察し、近代中国の医学界において中国人西医の役割と影響力が大きくなっていたことや、当時の政府が衛生・医療行政を進めるなかで、医学界の統合を要求していたことを明らかにした。史料としては、東洋文庫や東京大学、台湾の中央研究院で収集した『中華医学雑誌』の英語版及び中国語版、『中西医学報』などを主に利用した。また、医療宣教師が残した文章や『申報』のような新聞史料も参考にした。 4)本研究の成果の一部を、平成23年9月17日に韓国ソウルで開催された明清史学会において口頭発表した。また、平成23年度には間に合わなかったが、明清史学会において口頭発表したものが韓国の学術雑誌『明清史研究』37集に掲載されることが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国医療伝道協会の役割についての研究は順調に進んだ。研究をする中で、中国医療伝道協会と中華医学会の合併問題についても考察することができた点は子想外の大きな収穫であった。しかし、医療宣教師の伝統医学への認識に関しては考察することができずに終わったので、スピードや当初の予定の達成度としては少し遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
1)中国医療伝道協会の活動を中心に、医療宣教師の中国伝統医学への認識について研究を進める一方、当初の研究計画通りに医療宣教師の活動により伝染病対策がどのように変化したのかを考察する。 2)中国医療伝道協会の活動の中心地であった上海への史料調査の必要性を感じたので、上海档案館や上海図書館において資料調査を行う予定である。
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Research Products
(1 results)