2011 Fiscal Year Annual Research Report
複合的環境要因に応じた植物個体レベルの物質分配調節メカニズムの探索
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11J09850
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉浦 大輔 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 物質分配 / 窒素 / 光合成 / 植物ホルモン / システミック |
Research Abstract |
1.不均一な光環境におけるカジカエデの資源分配パターンと成長プロセスの解析 Y字型に2分枝したカジカエデを用いて、不均一な光環境に対して樹木がどのような資源分配を通じて成長していくかを解析した。その結果、(1)不均一な光環境下では、強光環境下の枝へ窒素が集中的に分配され、弱光環境下の枝への窒素分配が抑制的となること、(2)均一な光環境下では各枝への窒素分配が均等に行われること、(3)各枝の成長量は、葉面積と葉の窒素濃度、光合成特性、光強度や気温などの気象条件で十分に説明できること、などが明らかとなった。 2植物ホルモンに着目した個体レベルでの物質分配を決定するメカニズムの解明 光環境および土壌窒素可用性に応じた成長速度を最大化させる最適な葉/根比を解析的に求め、どのようなメカニズムがあれば可塑的に物質分配を調節できるかを検討した。その結果、植物体は葉面積レベルの同化速度と窒素吸収速度の比を認識することで、物質分配を最適化可能であることが予測された。これらのシグナル伝達物質として植物ホルモンの効果を評価したところ、ジベレリンとサイトカイニンは葉/根比を増加させること、ジベレリン合成阻害剤は葉/根比を減少させること、葉の厚さや葉の窒素含量も大きく変化することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物質分配を調節するメカニズムを動的成長モデルで再現することができた。このモデルを構成する仮定のいくつかを、実際の植物体を用いた操作実験によって検証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
植物体を用いた操作実験をより詳細なスケールで行うことで、メカニズムの解明に取り組む。現在、植物ホルモンの添加実験を、種類、添加部位、濃度等を変化させて行っている。また、個々の器官の環境を制御する装置系を構築し、それぞれの器官での植物ホルモンの発現量や、光合成産物や窒素の分配パターンを解析する予定である。
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