2011 Fiscal Year Annual Research Report
高等植物の花の発生・分化のメカニズムとその多様性の解明
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11J09932
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 若奈 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | YABBY / イネの花 / 発生遺伝学 |
Research Abstract |
1.tongari-bousi1(tob1)変異体を用いた解析 ・表現型の解析および,注目する器官の発生過程の組織学的解析 tob1の表現型の異常は,小穂に多面的な表現型を示したので,大まかに,5つのクラス(I-V)に分類した行また,tob1小穂の発生初期の観察やマーカー遺伝子の発現解析により,様々な側生器官の異常に加えて,メリステムの早期停止,オーガナイゼーションの異常,さらには細胞運命の異常などメリステムの異常も多数認められた.これらの結果から,TOB1は側生器官の発生だけでなく,メリステムの細胞運命や維持の制御にも関わっていることが示唆された. ・ポジショナルクローニング法による原因遺伝子の単離および相補性検定 ポジショナルクローニング法によりtob1の原因遺伝子の単離を試みた結果,OsYABBY5遺伝子内にナンセンス変異を見出した.そこで,野生型のこの遺伝子を含むゲノム領域をtob1変異体に導入したところ,表現型が相補された.以上のことから,この遺伝子がTOB1遺伝子であることが確認された. ・2重変異体の作製(交配) tob1と,メリステムの維持に関わるfonや,花器官形成が異常なdl-sip1,eg1を交配した行 2.花器官の形態形成に関わる遺伝子の機能解析 ・KB-Fuzzy Artによる遺伝子の抽出 KB-Fuzzy Art法を用いて,マイクロアレイデータからいくつかの遺伝子を抽出した.そして抽出した遺伝子について,遺伝子機能抑制体を作製したが,表現型の異常は認められなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した計画内容に加え,TOB1過剰発現体の解析やTOB1-SEDX発現体の解析を実施し,TOB1遺伝子が細胞非自律的に働き,側生器官からメリステムへのコミュニケーションに関わっているということ,そして,TOB1が転写抑制に関わる可能性があることを明らかにした.この研究は,PLANT CELL誌に掲載され,該当号の表紙を飾る論文となった,また,この論文は,Faculty of 1000にも"New Finding"として選出された.このように,当初の計画を上回る研究成果をあげることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,TOB1が転写抑制に関わる可能性が示唆されたので,今後はそれを証明する.具体的には,TOB1の転写抑制効果の解析や,TOB1と既知の転写抑制タンパク質との相互作用の解析などを計画している. また,イネには,TOB1と非常に類似したYABBY遺伝子TOB2とTOB3が存在し,これらは冗長的に働いている可能性が考えられるので,TOB2とTOB3にも着目して解析を行う. さらに,tob1遺伝子の細胞非自律的な働きを明らかにするために,TOB1遺伝子がどのようなシグナルの生成に関与し,そのシグナルがどのようにメリステムへと伝達されるのかということを解明したいと考えている.
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