2011 Fiscal Year Annual Research Report
Th17とは異なるIL-17産生細胞の炎症性疾患における役割の解析
Project/Area Number |
11J09989
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋津 葵 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | IL-17 / (c)^<TM>T細胞 / 炎症性疾患 / 自己免疫疾患 / 関節炎 |
Research Abstract |
本研究では、IL-17、およびT細胞依存的に自己免疫性関節炎を自然発症するIL-1レセプターアンタゴニスト(Ra)欠損(KO)マウスを用い、Th17細胞以外のIL-17産生細胞におけるIL-17産生メカニズム・病態形成における役割を明らかにし、炎症性疾患における新たな分子機構を解明することを目的とした。これまでの研究から、CD4^+T細胞、および非Th17細胞のうちγδT細胞がIL-1Ra KOマウスの関節炎発症において病原性を有していることが明らかとなっていた。しかしながら、Th17細胞との分化誘導機構や病態形成における役割の相違など不明な点は多く残されていた。 当該年度は、CD4+T細胞、γδT細胞をscid/scidマウスへ移植したところ、それぞれ単独では関節炎を発症せず、両者の存在が必要であることを明らかにした。γδT細胞を単独で移植した際は、関節局所にIL-17産生細胞は存在しなかったが、CD4+T細胞を同時に移植することによりIL-17産生性γδT細胞(γδ17細胞)の関節への集積が認められた。これらの結果はCD4^+T細胞が臓器特異性を決定し、γδ17細胞が炎症の増幅を行っているという新たな関節炎発症メカニズムを示している。その一方で、胸腺由来のT細胞は存在しないが、胸腺外分化したγδT細胞は存在するようなヌードマウスとIL-1Ra KOマウスを掛けあわせたところ、関節炎を発症し、γδ17細胞が顕著に増加していたことから、関節でIL-1の過剰発現があるときにはCD4^+T細胞の関与なしにγδ17細胞だけで関節炎を発症する事が示唆された。このことは、たとえCD4^+T細胞が自己抗原を認識しなくても、感染やIL-1関連遺伝子の変異等によりIL-1が異常に産生されただけで関節炎を発症しうる可能性を示している。本研究で得られた知見は、関節リウマチという病気の理解に貢献できるだけでなく、新たな治療法の確立につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
各種遺伝子欠損マウスを用いて当初予想しなかった現象を見出しており、特に、IL-17産生性(c)^<TM>T細胞による関節炎発症メカニズムは、これまでの概念と異なる極めてインパクトの高いものであるため。また、最近は腸炎の発症においても新たなメカニズムを示唆するデータが出てきており、オリジナリティ、インパクト共に高い研究に発展すると考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、IL-1Ra KO-nu/nuマウスは関節炎だけでなく、腸管炎症を併発することから、腸管由来のγδT細胞がIL-17を過剰に産生することにより腸管炎症をも引き起こすのではないかと考えていた。この仮説を検証するために、γδT細胞が存在しないRag2 KOマウスとIL-1Ra KOマウスを掛けあわせたところ(IL-1Ra KO-Rag2 KOマウス)、予想に反して腸管炎症は抑制されなかった。IL-1Ra KO-Rag2 KOマウスの腸管では、Rag2 KOマウスに比べてIL-17が増加傾向にあった。よって、新規IL-17産生性自然免疫細胞が腸管炎症の発症に関与している可能性が考えられる。また、非ヌードマウス、非Rag2 KOマウス背景のIL-1Ra KOマウスでは腸管炎症が起こらないことから、T細胞による腸管免疫寛容メカニズムが働いていると考えられる。本年度はIL-1Ra KO-Rag2 KOマウスやIL-17 KOマウスを用いて腸管炎症における病態形成、免疫寛容メカニズムを解明しようと考えている。また、腸内細菌やIL-1の過剰シグナルと腸管炎症の関係性についても検討する。
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