2011 Fiscal Year Annual Research Report
眼球運動による視覚情報の時空間統合および分離の解明
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11J10037
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺尾 将彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 等輝度色運動 / 対応問題 / 眼球運動 |
Research Abstract |
視覚系は網膜からの入力信号に基づいて外界の状態を推定する。初期の視覚情報処理は網膜座標位置に基づいて行われる。しかし、眼球運動などによる観察者自身の運動によって網膜像と外界の関係は乖離するので、網膜位置に基づいた信号処理だけでは外界の正しい推定は難しい。本研究の目的は視覚系には網膜座標系に基づく処理から環境座標系に基づく非網膜的な処理へと変換されるメカニズムを明らかにする事である。眼球運動の情報を利用した非網膜的な情報処理メカニズムの解明は視覚系がどのように網膜からの入力から普段の見えに変換しているのかを知る上で重要である。今年度実施した主な研究活動は以下の通りである。(1)追跡眼球運動によって生じた網膜上の等輝度色運動が、どのように速度補償されるのかについてまとめた論文をJournal of Vision誌にて発表した。この研究は実際よりも遅く推定された等輝度色運動速度と(輝度運動時と同じ推定ゲインの)眼球運動の推定速度が足し合わされた速度が追跡眼球運動中に知覚されることを示した研究である。既に、輝度ベースの運動処理が眼球運動の影響を受ける事走られているが、輝度の処理とはメカニズムも知覚特性も異なる色運動も輝度運動と同様の補償を追跡眼球運動中に受けることを明らかにした。(2)運動信号を処理する際に視覚系は何がどこに移動したのかを決定しなければならない(対応問題)。この決定は一意的に解が定まる事は少なく、視覚系は様々な制約条件を設定することで曖昧性を解消している。その一つが要素間の距離が近い方を結びつけるというものである。本研究では追跡眼球運動とサッカードの二つの眼球運動の皮質由来の情報がこの距離関係に影響を及ぼすことを明らかにした。従来より、この距離関係は網膜上における距離であると信じられてきたが、本研究によって初めて外界の距離関係に基づいた対応決定がなされる事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、順調に実験結果を得る事が出来ている。また、それに伴い学会発表における優秀発表賞の受賞や国際師への論文発表なども行っており、順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度得られた結果を論文にまとめ国際誌に投稿する。計画書に記載した2年次の研究計画を実施する。
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Research Products
(12 results)