2012 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル語母音調和の音声学・音韻論的研究-その獲得・類型をさぐる-
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11J10039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
旭 友貴 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | モンゴル語 / 母音調和 / 言語獲得 / 言語類型論 / 最適性理論 |
Research Abstract |
本年度の成果として挙げられるのは本研究の主な対象言語であるモンゴル語の音韻的解釈,特に韻律についての新たな解釈の提案である。モンゴル語は日本語や英語のように韻律による語の意味の対立が見られないため,様々な分析が提唱されている。本研究ではこのモンゴル語の韻律的な側面をより詳細まで明らかにすることでモンゴル語の分析,さらには本研究の主な目的である母音調和の研究に役立てることとした。 具体的には,従来は語の最初の母音が比較的強くはっきりと発音されることで多くの研究においてストレスがあるとみなされてきたが,これは母音調和が最初の母音の性質を基準に調和を起こすという機能的な要請からそのように発音されているのであり,語の韻律として重要なのはむしろピッチの方であると分析した。この解釈については2012年8月に日本音韻論学会の音韻論フォーラム2012において発表したが,未だ論文という形式での発表には至っていない。 また,前年度は本研究の主な研究の枠組みである最適性理論(Optimality Theory : 以下OT)以外の研究枠組みによる分析の可能性を追求したが,本年度は主に最新のOTによる分析を中心とした理論的研究を試みた。 具体的には近年最適性理論の新たな枠組みとして提案された調和直列モデル(Harmonic Seriahsm)を用いた母音調和の分析である。このモデルは従来の並列的な計算のみによるOTでは解決できなかった問題を解決すべく発展しているものであるが,年度内にこのモデルを用いた独自の分析を提案するには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主な遅れとしては現地調査ができなかったことが挙げられる。これは現地協力者との折衝がうまくいかず渡航の日程調整ができなかったことが主な原因である。また,研究成果の発表も学会発表1件に留まり,論文という形での発表ができていないことも研究の遅れであると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
従来行なってきた研究は引き続き行なっていくが,加えて次年度は研究を学会の場や論文の形で発表することに主眼をおいていきたい。また,現地調査により成果を挙げることも狙いたい。
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