2011 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物材料の欠陥の定量的理解による材料開発指針への展開
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11J10050
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Research Institution | Tohoku University |
Research Fellow |
及川 格 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | プロトン伝導体 / ペロブスカイト / 固体NMR / 局所環境 / 酸化物 / 酸素空孔 / Sc-45 / プロトン |
Research Abstract |
本年度は、Scを添加元素に用いたペロブスカイト型プロトン伝導体を作製し、母相のペロブスカイト酸化物のカチオンの違いがSc周囲の局所環境に及ぼす影響についてSc-45NMRを用いて解析した。作製した試料は、10 mol% ScドープBaZrO_3、BaCeO_3、CaZrO_3、SrCeO_3、および5 mol% ScドープSrZrO_3であった。それぞれの試料のSc-45 NMRスペクトルでは、6配位のSc、酸素空孔を含む5配位のSc、及びプロトン性欠陥を含む6配位のScと帰属されたピークが観測された。5配位のScによるピークの線形を解析した結果、5配位のScの配位多面体の等方性が母相のペロブスカイト酸化物AXO_3(A=BA,Ca,Sr, X=Ce,Zr)のAサイトとXサイトのカチオンの種類によって変化することが明らかになった。立方晶に近い構造をとるBaZrO_3やBaCeO_3では5配位のScの配位多面体の異方性が大きく、斜方晶でX0_6八面体間の歪みが大きいCaZrO_3やSrCeO_3では5配位のScがより等方的になっていると考えられた。MRスペクトルで観測されたそれぞれのScサイトによるピークの面積強度からSc周囲の酸素空孔とプロトン性欠陥の量を算出した結果、5配位のScの異方性が大きいBaZrO_3ではSc周囲の酸素空孔がH_2Oと反応してプロトン性欠陥を形成しやすく、一方、より等方的な5配位を有するCaZrO_3ではSc周囲の酸素空孔が安定に存在していることが示唆された。本年度の研究により5配位のSc周囲の等方性が欠陥の安定性に影響を与える可能性が示され、酸素空孔を含む5配位のカチオン周囲の等方性に着目した新たな材料開発へのアプローチが可能なのではないかということが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究から試料の組成によって5配位のSc周囲の等方性が変化することが明らかになり、Sc周囲の等方性が欠陥の安定性に影響を与えることが示唆されたことにより、添加元素であるSc周囲の局所環境と欠陥量の関係について新たな知見が得られたため研究が順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、プロトンの運動性の解析を行っていく予定である。温度可変NMR測定が可能なNMRプローブを用いてH-1、及びSc-45NMR測定を行い、NMRスペクトル、及びスピン擁和時間を解析することによりプロトンの運動性に関する情報を得る。さらに、雰囲気を制御しながら高温NMR測定が行えるようにプローブを改良することを試み、水蒸気分圧を変化させたときのプロトンの運動性の変化を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(1 results)