2013 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物材料の欠陥の定量的理解による材料開発指針への展開
Project/Area Number |
11J10050
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
及川 格 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ペロブスカイト型酸化物 / プロトン伝導体 / 核磁気共鳴分光法 / 局所構造解析 / 第一原理計算 / プロトントラッピング / 酸素空孔 / 希土類元素 |
Research Abstract |
平成25年度の研究の目的は、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance ; NMR)分光と第一原理計算を用いた局所構造解析によりBaZrO_3系プロトン伝導体の局所構造の定量的理解と粒界伝導度の向上によりプロトン伝導性を向上させることであった。 本研究を遂行する過程で、NMR分光によりプロトンの長距離伝導を阻害しているプロトントラッピングを抑制できる知見が得られたため、申請書で計画していた粒界伝導度の向上でなくプロトントラッピングに着目して伝導度向上を目指す研究を行った。その結果、希土類置換BaZrO3プロトン伝導体の長距離伝導の律速過程となっている置換元素によるプロトンのトラッピングについて、拘束を受けていないプロトンの存在をNMRと熱重量分析により示した。 それに加えてプロトン伝導性酸化物のキャリア濃度とキャリア形成に関わる欠陥構造、局所構造に着目して研究を行い、NMR分光法を用いたSc置換BaZrO_3プロトン伝導体の解析より局所構造がキャリア濃度に及ぼす影響について示した。さらにNMRと第一原理計算を組み合わせた手法が核位置での電場勾配を指標とすることで酸化物中の格子欠陥などの局所的な構造の理解に役立つことを示した。 本研究の意義は置換元素周囲のプロトン量と酸素空孔量を定量的に明らかにすることにより、局所構造の観点からプロトン伝導性を理解する点にある。過去の研究では、電気伝導度測定や熱重量分析により巨視的な視点からプロトン伝導体の理解はかなり進んでいるが、伝導度に直接影響する置換元素周囲の構造といった微視的な観点からの理解はあまり進んでいなかった。本研究では、電気伝導度測定やX線回折では得ることが難しい置換元素周囲の欠陥の情報を局所構造に敏感なNMRと第一原理計算を用いて解析することにより、プロトン濃度と伝導度の向上に資する材料開発指針を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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