2011 Fiscal Year Annual Research Report
下垂体組織幹細胞の細胞株樹立とホルモン産生細胞への分化誘導
Project/Area Number |
11J10063
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Research Institution | Meiji University |
Research Fellow |
大砂 まるみ 明治大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 下垂体 / 濾胞星状細胞 / 組織幹細胞 / S100b |
Research Abstract |
脳の下部に存在する下垂体は、恒常性の維持に重要なホルモンを合成・分泌する内分泌器官である。その前葉部分には、5種類のホルモン産生細胞の機能維持や供給に働くと考えられている非ホルモン産生細胞の濾胞星状(FS)細胞が存在する。このFS細胞はいくつかのサブポピュレーションをもつと考えられ、各サブポピュレーションに属するFS細胞が異なった機能を持ち、下垂体の機能が維持されていると推察される。本研究では、FS細胞で蛍光タンパク質を発現させたS100b-GFPトランスジェニック(S100b Tg)ラットを用いて、FS細胞の細胞分化能の解析とFS細胞群の株化を行い、下垂体細胞の供給機構の解明や下垂体幹細胞による臨床応用に資する研究展開を目指した。 (1)S100b Tgラットの下垂体前葉より単離した初代培養細胞を用いて、蛍光を発するFS細胞を識別し、タイムラプス顕微鏡で継続的な形態観察を行った。その結果、観察し始めに蛍光を発するFS細胞の一部が自身の蛍光強度を変化させ、3日間の培養後にホルモンもしくはPit1(GH・PRL・TSH産生細胞に共通する転写因子)陽性細胞であることを確認した。以上のことは、これまでに報告が無く重要な成果として論文作成中である。 (2)細胞不死化能をもつT抗原を組み込んだ発現ベクターを用いてFS細胞株の作製実験を行った。マイクロマニュピレーター、遺伝子導入試薬、Electroporation法、レンチウイルスを用いてT抗原発現ベクターをS100b-GFPトランスジェニックラットから単離したFS細胞に導入した。その結果、マイクロマニュピレーターでは細胞への遺伝子導入を確認することが出来なかった。遺伝子導入試薬・Electroporation法・レンチウイルスを用いた実験では、細胞への遺伝子導入を確認することは出来たが、導入された細胞の増殖を観察することが出来なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、FS細胞が下垂体前葉においてホルモン産生細胞供給の一端を担うことを示唆する結果をS100b Tgラットを用いたFS細胞のタイムラプス観察実験から得ている。このことは、これまでに報告が無く重要な成果である。また、FS細胞の株化実験ではT抗原の導入のみではFS細胞の性質を維持したまま増殖しないことがわかり、変化しやすいFS細胞が他の細胞に変わらない条件で培養して増殖させる必要性を見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
FS細胞の細胞株作製実験において、S100b Tgラットより単離したFS細胞を様々な培養条件で培養する予定である。現在までに、細胞増殖を誘発するT抗原遺伝子の導入によってFS細胞を示す蛍光を維持したまま増殖させることが出来なかった。そのため、今後はFS細胞を示す蛍光を維持したまま増殖し培養可能な条件の探索をさらに行い、FS細胞を株化することを試みる。 そして作製したFS細胞株を用いて、ホルモン産生細胞の分化機序を解明する。
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Research Products
(5 results)