2011 Fiscal Year Annual Research Report
酵母の窒素取り込み機構の解析および排水処理酵母の窒素蓄積量の強化とその利用
Project/Area Number |
11J10107
|
Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
渡部 貴志 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 窒素除去 / 廃水処理酵母 / 高濃度有機性排水 / S. cerevisiae / DNAマイクロアレイ |
Research Abstract |
○具体的内容 本研究では、「窒素を高蓄積する排水処理酵母の育種する」ことを目標とし、高濃度有機性排水からの効率的な窒素除去方法の開発を目的としている。本年度では、「S. cerevisiaeの窒素代謝関連遺伝子の窒素蓄積に与える影響調査」と「排水処理酵母からの窒素高蓄積変異株の取得」の二点を具体的目標として検討を行ってきた。その成果の概要を以下に示す。 ・S. cerevisiaeの窒素代謝関連遺伝子の窒素蓄積に与える影響調査 実験室酵母S288c株を用いて、窒素濃度に応答して窒素取り込みを制御する系が働く条件を検討した。 その条件を基にDNAマイクロアレイ解析による窒素取り込みを制御している候補遺伝子を検索し、実験室酵母BY4741株の非必須遺伝子破壊株セットを用い、候補遺伝子の破壊による窒素蓄積への影響評価を行った。その結果からさらに候補遺伝子を選抜し、S288c株を用いて選抜した遺伝子を破壊し、再現性を調査したところ、URE2遺伝子の破壊株では、増殖が悪くなるものの、窒素蓄積量が1.2倍に増加した。得られた情報を基に、遺伝子組換えを用いない手法で、酵母の窒素蓄積量を強化する手法を開発した。 ・排水処理酵母からの窒素高蓄積変異株の取得 窒素源の種類に対する窒素除去量と増殖性等を指標に、高濃度有機性排水の処理に有用な酵母を選抜した。プレート上のコロニーの形態変異や高窒素条件下でのプロテアーゼ活性を指標に、排水処理酵母の窒素蓄積量を向上できることを確認した。 ○意義・重要性 バイオエタノール生産の本格化に伴い、その蒸留排水の排出量が飛躍的に増加することが予測される。このような高濃度有機性排水は、下水処理などの活性汚泥法では処理が出来ず、またメタン発酵等の嫌気的処理では、窒素が除去できない。本研究が完成することによって、これらの問題解決につながる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
創意工夫によって当初の計画より早く、本年度の最終目標である「窒素の蓄積が増加させる方法の開発」にたどり着くことが出来た。このため、予算と時間の余裕を作り出すことが出来たので、次年度の計画であったアウトリーチ活動や排水処理の現場視察等も前倒しして行うことが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終目標は、窒素除去能を強化した排水処理酵母の有用性を実証することである。実際に排出される様々な高濃度有機性排水を入手するため、外部の企業・機関へ積極的に交渉して協力していただくことが重要となる。そこで、今後はさらにアウトリーチ活動等を推進していく。 また、学会等で外部研究機関の方から酵母の窒素代謝の遺伝子制御の解析について新たな視点の取り組み方を教えていただいた。そこで、論文等に記述されていない基礎学問的な情報収集にも、学会発表や研究室訪問等の交流を通じて積極的に取り組んでいく。
|