2012 Fiscal Year Annual Research Report
格子ゲージ理論における厳密なカイラル対称性とその量子論的性質の解明に関する研究
Project/Area Number |
11J10112
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
臼井 耕太 北海道大学, 大学院・理学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 格子ゲージ理論 / 第二量子化作用素 / Fermion Fock空間 / Overlap Dirac演算子 |
Research Abstract |
格子上の場の理論は,特殊相対論的な場の量子論の正則化として,理論的にもまた実際の物理量の計算のにおいても極めて重要な地位を占める.特に,極微の世界の素粒子たちに働く強い相互作用の理解には欠かすことのできない体系である.近年,Overlap Dirac演算子と呼ばれる格子上のDirac作用素を用いて,厳密なカイラル対称性を保ったまま,格子フェルミオンが定義できることが示された,この格子上のカイラルフェルミオン(オーバーラップフェルミオンという)を用いた様々な研究がその発見以来積み重ねられてきている.私は,本年度の研究において,オーバーラップフェルミオンをはじめとした様々な格子模型を,数学的に厳密に研究した.昨年度の研究において,私は,極めて一般的な設定の下で格子上のスカラー場の理論から量子論を再構成し伝搬関数のスペクトル表示を導出したが,今年度の研究で,さらに次のことが明らかになった.(1)フェルミオン,ゲージ場が存在する系においても,同様の公式が得られること.(2)このスペクトル表示は一意的であること.これらの結果は,格子上の場の理論の数学的な解析において重要であると考えられる.一方,場の量子論の数学的な研究として重要なもうひとつの側面に,量子場と粒子の相互作用系の研究がある.これらの研究において扱われる模型においては,量子場の特異性を"均す"ために紫外切断が導入されており,理論は連続時空で定義されている.格子正則化と異なり,これらのアプローチでは,Hamiltonian形式の量子論が与えられており,主要な研究として,物理量のスペクトルの構造解析がある.私は,二口伸一郎氏(北海道大学)と共同で,Fermion Fock空間における第2量子化作用素のスペクトルを明らかにした.この結果は,Fermion Fock空間の一般的な数学的構造を明らかにした定理であり,重要である.
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Research Products
(1 results)