2011 Fiscal Year Annual Research Report
骨免疫疾患における樹状細胞免疫受容体Dcirの機能解明
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11J10121
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸橋 拓海 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 疾患モデル動物 / C型レクチン / サイトカイン |
Research Abstract |
DCIR遺伝子欠損(KO)マウスは加齢とともに自己抗体の産生亢進と関節部位の炎症を伴う自己免疫疾患を自然発症することから、DCIRは免疫応答を負に制御し免疫システムの恒常性を維持していると考えられた。一方で、DCIR KOマウスは骨形成を伴う後肢足根関節の強直といった骨代謝疾患を自然発症する。しかし、この強直の発症はT、B細胞の存在しないDCIR/RAG2-二重KOマウスにおいて完全に抑制されたことから、強直の発症に免疫系が関与していることが示唆された。そこで、DCIR KOマウスで認められる骨代謝疾患の発症、病態進行のメカニズムを解析し、DCIRによる骨免疫制御機構を解明することを目的として研究を行った。 まず強直を発症した関節の詳細な病理組織学的解析を行った。その結果、腱や靭帯の石灰化や異所性骨化、さらに線維軟骨細胞の異常増殖が認められ、これらが原因で関節の強直が起こっていることが明らかとなった。DCIR KOマウスは加齢とともに付着部炎を自然発症するが、それに加えて今回明らかになった骨、軟骨形成を伴う強直といった病態は、ヒトの強直性脊椎炎(AS)の特徴に類似している。このことから、DCIR KOマウスはヒトのASの良いモデルマウスであり、病態形成メカニズムの解明や新規治療法の開発に有用であると考えられる。 DCIR/MG2-二重KOマウスにおいて強直が起こらないことから、強直の発症にはT細胞もしくはB細胞の関与が強く示唆される。加齢DCIR KOマウスのB細胞には異常が認められなかったものの、炎症性サイトカイン産生性の活性化T細胞が野生型マウスに比べて顕著に増加していることが明らかとなった。以上の結果から、付着部炎や強直の発症には活性化したT細胞が重要であり、特に炎症性サイトカインが病態形成に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ研究実施計画に従って研究が進んでおり、DCIR KOマウスが自然発症する骨免疫疾患の病態形成メカニズムが明らかになりつつある。また、病態形成に重要な役割を果たしているサイトカインを同定するためのDCIR/サイトカイン二重欠損マウスの作製も完了していることから、おおむね順調に進行しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
DCIR KOマウスが自然発症するヒト強直性脊椎炎に類似した病態形成の原因がT細胞であるという推測を、移入実験によって確認する。また、これまでに候補に挙がった炎症性サイトカインについて、どのサイトカインが病態形成に重要な役割を担っているのか、DCIR/サイトカイン二重欠損マウスの加齢、観察によって同定する。そして、免疫系の細胞がどのようにして炎症とそれに伴う骨形成を制御しているのかを、in vitroの系を用いて検討する。以上の研究を通して、DCIR欠損によって起こる病態のメカニズムを明らかにすることで、ヒト強直性脊椎炎の新規治療法の開発に役立てる。
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Research Products
(2 results)