2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J10139
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大島 佐知子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 電気双極子モーメント / 時間反転対称性 / 地熱 / 太陽ニュートリノ |
Research Abstract |
現代物理学の重要なテーマである時間反転対称性の破れはCP対称性の破れとCPT定理から間接的に示唆されているが、直接的な発見は未だされていない。中性子や原子の永久電気双極子モーメント(EDM)探索はその時間反転対称性の破れを直接測れる貴重な手段の一つである。中間子のCP非保存は小林、益川によって現象論的に説明されているが、この小林益川模型とEDMの関係性を注意深く考察することは重要なテーマである。中性子にEDMを生じさせるファインマンダイアグラムにおいてバーテックス補正の計算を行う際にWボソンの伝播関数が重要であることに注意して、新たに評価された伝播関数を使って計算を行なったところ、核子のEDMは小林益川模型のCP非保存位相による計算だと厳密にゼロになることがわかった。CP非保存以外の起源も視野に入れて中性子EDMを注意深く考察することが重要である。 核物理の応用研究として地熱の起源に関する研究も行った。地球内部の熱生成のメカニズムに関しては未だ不明な点が多い。ウラン等の放射性元素の崩壊熱が地熱に重要な寄与をすると考えられてきたが、これまでの議論は定性的なものにおさまっていた。しかし2011年にKamLANDグループが地球内部のウラン・トリウム各系列の崩壊に伴う反電子ニュートリノ(地球ニュートリノ)の観測結果を発表し、地熱全体の半分程度がこの崩壊熱によるものであることがはっきりしてきた。残り半分の熱は地球誕生時に発生した熱の残りだと考えられているが、議論を定量的に進めていくためにも、他の熱源の可能性を探ることは重要である。そこで太陽から地球に降り注がれる大量のニュートリノ(太陽ニュートリノ)が地球内部の電子・原子核と反応することで生じる地球内部熱の計算を行なった。その結果、太陽ニュートリノにより生成される熱量は放射性元素の崩壊熱に比べて8-10桁ほど小さく、地熱への寄与はこの程度の大きさであることが定量的に分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度に開始する予定の研究に着手し、学会で発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
太陽ニュートリノの地熱への寄与に関して定量化を進め、学術雑誌へ投稿する。
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Research Products
(2 results)