2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J10139
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大島 佐知子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 電気双極子モーメント / 時間反転不変性 / 核力 |
Research Abstract |
物理学で最も基本的な対称性がCPT対称性であり、荷電共役変換(C)、パリティ変換(P)、時間反転(T)を同時に系に施すと基本方程式は不変であるという対称性である。現在までに弱い相互作用ではCP対称性の破れがあることがわかっているが、これはCPT対称性から間接的にT不変性の破れを示すことになる。一方でT不変性の破れを直接的に示した明らかな実験結果は今のところ発表されていない。 T不変性の破れを直接的に検証するための研究として孤立系電気双極子能率(EDM)の測定がある。Xe,Hg原子を用いた原子EDM、中性子EDMの実験、また最近ではイオン原子EDMの実験が行われている。原子EDMはschiHの定理によって計算過程でEDMの項がほぼ消され、理論的には極めて小さい値でしか観測できないのではないかと考えられている。 Schiffの定理では系が中性の場合に遮蔽されると示されている。系が中性の場合にEDMの値が小さいとして摂動計算を行うと、1次と2次の摂動項がお互い逆符号で同じ値になり打ち消される。しかしイオンの場合では電子による遮蔽がないので核子EDMの項が残る。そこで、今後イオン原子EDMが実験される場合の目安となるような計算が必要と思われたので、核子EDMが磁気能率と同様にスピンに比例する表現であることに着目し、磁気能率の実験値を用いて様々な種類のイオン原子EDMを計算し、陽子EDMと中性子EDMで表された簡単な表を作った。この結果は学術誌に掲載された。 原子核は核力によって核子が束縛され原子核を構成していて、核力は中間子の交換によって生じると考えられている。中間子はπ、η、σ、ρ、ωの種類があり、これらの交換で核力が記述される。中間領域の核力は明らかにされていない問題のひとつである。π、η、ρ、ωボソンは実験的にも確認されているが、σボソンはスカラーボソンでもあり、理論・実験共にその存在は確認されていない。しかし、OBEP模型の中ではこのσボソン交換力が最も重要な引力を与えていると考えられている。そこで2π交換力での新たなポテンシャルを計算した。その結果、T=0でのReidポテンシャルと近いポテンシャルとなることがわかった。これらについては物理学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学術雑誌に論文が掲載されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2π中間子交換力に関する研究の論文を投稿する。
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Research Products
(3 results)