2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J10139
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大島 佐知子 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2011 – 2014-03-31
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Keywords | 核分裂 / 対相互作用 / 熱中性子 |
Research Abstract |
熱中性子による核分裂の問題は実験的にはすでに十分理解されており、また、原子炉への応用の面でも特に問題となる現象があるわけではない。しかし、熱中性子がU-235に吸収されると核分裂が起こるのに対して、それよりも3個中性子が増えたU-238原子核の場合、熱中性子を吸収してもほとんど核分裂はせずにγ線遷移過程が優先的に起こる。また、理論的にみるとこの現象がきちんとは理解できる模型がこれまで存在していないのである。核分裂の理論は液滴模型によって構築されてきたが、中性子の数が奇数であるか偶数であるかの差については液滴模型では示すことができない。そこで我々は核分裂を記述する新しい「重中性子模型」を提案した。その際、熱中性子がU-235核における「はぐれ中性子」(不対中性子)と散乱して対相互作用により「準束縛状態」(重中性子と呼ぶ)を形成し、これが芯原子核と散乱して核を集団励起状態に導き、核分裂に至るという模型である。この際、核分裂を起こす確率は重中性子の束縛エネルギーに強く依存しており、この引力エネルギーと等分のエネルギーが核の集団励起に使われ、核分裂へと導く事により、原子核分裂が起こる事を示した。 この模型計算により、U-235核では熱中性子による核分裂が起こるが、U-238核では核分裂ではなくγ線崩壊過程が優先される機構が解明された。特に、U-238核では熱中性子が散乱し吸収された後、主として1粒子的な軌道に入り、このため原子核全体の励起というよりも、熱中性子が高い励起エネルギー状態に入りそこから核全体がリアレンジしてγ線崩壊をして基底状態に遷移してゆくという現象が主力である。この場合、入射中性子は核全体を集団励起する事は出来ない事が核分裂しない事の主原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(1 results)