2012 Fiscal Year Annual Research Report
高齢社会における高等教育財政の在り方に関する研究-公立大学看護学科を事例に-
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11J10148
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日下田 岳史 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 看護師養成 / 学歴 / 潜在看護職員 / 教育費用 / 便益 / ライフコース展望 / 進路選択 / 基礎看護技術 |
Research Abstract |
大学看護学部の増加には、潜在看護職員の就労状況が不透明であるがゆえに、看護労働力の量的確保のための施策として推進されてきたという側面があることは否定できないと考えられる。看護職養成の大学化の開始から約20年が経過した現在、潜在看護職員の高学歴化も進展していると見られる。そこで、潜在看護職員の中でも潜在看護師に着目の上、現在の就労状況や看護の仕事への再就労意欲等について、学歴差という観点から検討した。潜在看護師の学歴差に着目することは、看護師養成機関における教育費用の差に着目することを含意している。分析の結果、教育投資から受ける便益には当該女性の賃金だけではなく、例えば結婚等のライフイベントから得られる便益等も含まれている可能性があることを指摘した。 女子が教育投資から受ける便益には、本人の賃金だけではなくライフイベントから得られる便益等も含まれる可能性を念頭において、女子高校生のライフコース展望に基づく進路選択の合理性について分析を行い、女子の進路選択時に生じる葛藤メカニズムを明らかにした。 学歴別の基礎看護技術等を把握するため、新卒看護師等を対象とする質問紙調査(パネル調査)の設計を前年度から進めてきた。今年度、3病院において全3回の調査を実施し、結果の集計中である。 現在、第1回調査から得られたデータが使用可能となっているため、1病院の事例に注目して分析を実施した。小標本という特性を踏まえた分析手法(プール代数分析等)を採用した結果、大卒学歴は、現在の自己学習行動と結び付くことで、看護実践の管理的側面に関する自己評価の高さへの原因条件となっていることが分かった。この知見は、「専門職養成カリキュラムをめぐるステークホルダーの合意形成に関する実証的研究」(科学研究費補助金基盤研究(B)平成24~27年度、代表者橋本鉱市)の成果の一部でもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
潜在看護師の再就労意欲に関する分析から得られた示唆は、女子の行動モデルを理論的に検討するのに資するものであり、女子の進路選択の説明に対しても有用であると考えられる。個別に得られた知見の統合を図ることができたと言える。また、新卒看護師等を対象とするパネル調査の実施および分析もおおむね計画通り進んでいる。以上より、研究はおおむね順調に進展していると自己評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究から得られた、看護職養成の大学化と私的な費用負担の2重化から得られる理論的な示唆をまとめ、当該示唆と女子の進路選択行動モデルとの関係について整理する。 パネル調査の集計が完了し次第、分析に着手して、看護基礎教育とコンピテンシーとの関係について議論する。 そして、教育費用負担のあり方が、個人の進路選択と準専門職養成を結ぶ鍵概念となっていることについて、先行研究の整理を通じて検討を行い、研究から得られた知見を総括する。
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Research Products
(2 results)