2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの多方向移動動作メカニズムに関するバイオメカニクス研究
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11J10155
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲葉 優希 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | バイオメカニクス / 倒立振り子モデル / 姿勢制御 / 3次元動作解析 |
Research Abstract |
ヒトは様々な動作を行う際、次に起こす動作に備えて実際に身体各部を動かす以前に筋を活動させたり、姿勢を調節したりする。これは、予測姿勢制御(Anticipatory Postural Adjustment)と呼ばれている。前方への歩行動作を開始するためには典型的な予測姿勢制御が行われており、それは身体を前方へ推進させるために、必須であると報告されてきた。そこで、横・斜め方向への移動を開始する際にも、移動方向を調節し、その目的方向へ推進するために特徴的な予測姿勢制御が存在することが予測された。そこで、私たちは静止立位状態からの5方向(前方、斜め3方向、横方向)への踏み出し動作における移動方向調節の仕組みを予測姿勢制御に着目して明らかにすることに取り組んできた。その結果、移動方向に特異的な予測姿勢制御期の筋活動及び足圧中心の軌跡が観察され、予測姿勢制御期に移動方向の調節が行われていることが明らかになった。そこで、予測姿勢制御期の調節のみで移動方向が完全に決定されているのか、それとも動作の遂行中も移動方向の調節が行われているかを明らかにするために、1セグメント倒立振り子モデルを作成し、実際の動作における予測姿勢制御期終了時の身体重心位置と速度を初期値として与えたときのモデルの運動の軌跡と実際の運動の軌跡を比較検討した。その結果、前方への移動の重心の軌跡はモデルによって予測できたが、斜め・横方向の運動については、実際の運動の軌跡とシミュレーションの結果に大きな差が存在した。したがって、前方への移動とは異なり、身体を斜め・横方向へ移動させる際には予測姿勢制御期の移動方向の調節に加えて、運動の遂行中にも移動方向を調節するための筋活動が必要であることが示唆された。これは、横・斜め方向への移動動作の制御が前方への移動における運動制御とは異なることを示す重要な結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にあった、倒立振り子モデルを用いた多方向移動動作のシミュレーションおよび方向転換動作の実験を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、倒立振り子モデルだけでなく、全身の筋骨格モデルを用いた多方向移動動作のシミュレーションに取り組んでいく。そのうえで必要な方向転換動作の実際のデータは今年度中に取得したので、そのデータの整理・処理、およびシミュレーションソフトウェアの詳細な使用方法やその原理の理解を進めていく必要がある。
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