2011 Fiscal Year Annual Research Report
耐久財市場における消費者期待の実証分析、企業のイノベーション活動に関する実証分析
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11J10188
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五十川 大也 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | プロダクト・イノベーション / イノベーション政策 / イノベーション調査 / 動学ゲーム / 波及効果 |
Research Abstract |
川上のイノベーション政策、特に民間企業のイノベーション活動への財政支援の効果を定量的に評価する枠組みを構築し、関心となるパラメータの推定を行った。イノベーションの創出による恩恵は広範囲に波及することが予想されるため、民間部門への財政支援を初めとする政策介入が有効に機能する可能性が広く指摘されている。特に、少子高齢化という社会構造の変化、世界的な経済情勢の悪化、財政赤字の拡大、未曾有の天災等、我が国を取り巻く現況を踏まえると、「どのように財政支援を行うべきか」という効率性に関する議論を踏まえて政策介入を行う必要性が高まりつつある。本研究は、イノベーション活動への補助金について「現状の補助金が効率的に配分されているか」、さらに「効率的でなければ配分方法をどのように見直すべきか」という点を明らかにしており、政策的に非常に重要なものとなっている。 研究の具体的な内容としては、プロダクト・イノベーションに着目し、まず企業のイノベーション活動を捉える動学ゲームモデルを構築した。その上で、我が国のイノベーション調査の結果を利用して、民間部門におけるプロダクト・イノベーションに関する構造パラメータを推定した。推定には、近年開発された計量経済学の新しい手法を用いている。最後に、シミュレーション分析によって、補助金配分に関する評価を定量的に行った。 分析の結果、ブロダクト・イノベーションは周辺の企業にボジティブな影響(正の波及効果)を与えること、補助金が企業の利潤を上昇させる方向に機能することが明らかになった。ただし、現状の補助金配分は必ずしも効率的に行われておらず、配分方法を見直すことで経済的なアウトカムはさらに大きくなる余地があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね研究計画通りに進展している。平成23年度は川上のイノベーション政策を評価する研究を行い、結果を学会等で報告しつつ、国際学術誌に投稿する予定であった。国際的な学術誌への投稿こそ準備中であるが、国内の学術誌には研究成果が既に掲載されており、研究計画と比較して大きな遅れはない。
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Strategy for Future Research Activity |
企業側から消費者側に焦点を移し、川下の政策が民間部門のイノベーションに与える影響を分析する。特に、電化製品に対するエコポイントの影響を分析対象とする。具体的な手続きとしては、まず消費者の購買行動をモデル化し、既に構築した企業のイノベーション活動を捉える動学ゲームモデルと組み合わせる。モデルの構造パラメータを推定した後、川下の政策が消費者の需要にどのような影響を与えたか、またそれが企業のイノベーション活動をどの程度刺激したか、という点をシミュレーション分析によって明らかにする。耐久財を分析対象とするため、信頼性のある結果を得るために需要側も動学的にモデル化し、消費者が将来を予想しながら製品を購入している状況を捉える。
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