2011 Fiscal Year Annual Research Report
住宅の水回りから読み解く台湾住民の生活変容―清朝末期から現代まで―
Project/Area Number |
11J10302
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
新田 龍希 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 台湾 / 植民地 / 社会 / 生活 / 住宅 |
Research Abstract |
本研究は台湾住民の生活変容を、清朝末期から現代までを連続した視点で明らかにすることを目的としている。特に生活の中でも住宅の「水回り」に着目し、水回りというミクロな事象から(1)台湾人の生活習慣、(2)衛生政策、(3)都市インフラ(上下水道等)、水回り設備および技術のそれぞれの変容および相関関係を明らかにすることを目的としている。 本年度は、研究計画書中年次計画に記載した通り、先行研究の把握と日本国内での史料調査、及び台湾留学を中心に研究活動を遂行した。 本年度の成果としては、まず清代以後台湾における衛生政策とインフラ整備状況について整理したことが挙げられる。ただし清代については史料上の制約から詳細な状況は明らかにできていないが、下水や井戸の整備状況及び洋務運動下の都市内清掃事業について確認できた。また日本統治期に関しては公衆衛生政策の基本的整理をおこない、台湾各都市での上下水道整備状況を整理・リスト化した。なお戦後の衛生政策・インフラ整備状況については来年度引き続き検討する。 本年度の業績として、2012年3月に台北で開催された国際学会「第五〓台湾史青年学者国際学術研討会」での発表「日治初期台北的市区改正-以市区計画委員会議案為主」が挙げられる。ここでは、本年度研究計画である衛生政策とインフラとの関係を論じるため、衛生政策とインフラ整備(下水道)が同時に進められる事業として、日本統治期台北の市区改正事業を、台湾総督府内に設置された台北市区計画委員会に関する档案(「台湾総督府公文類纂」所収)を用いて検証した。なお本報告論文は論文集として、平成24年度中に台湾で出版される予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書記載の計画の通り、先行研究の整理、国内史料調査、事実関係の整理を行っており、また国際学会での発表も行っており、順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は戦後の衛生政策・インフラ整備状況を引き続き検討すると共に生活習慣の変容について考察を行う。具体的には台湾人の入浴習慣、及び排泄行為等、「水回り」に深く関わる生活習慣に着目し、インフラという物理的環境の変容及び衛生政策との関係からこれら生活習慣の変容状況を検討する予定である。なお今年度本研究を遂行した中で浮かび上がってきた研究検討課題として、生活環境を改変する都市開発過程で台湾人の旧来の土地をめぐる慣習(業、典など)や公共事業における費用負担の慣習(寄附・労力負担など)を、台湾総督府がどのように台湾人の「旧慣」として扱い、その内実を改変しつつ利用したかという問題が挙げられる。これは都市住民にとっての基本的慣習であり、生活習慣と深く関わる極めて重要な問題である。これらの慣習が総督府の上からの政策によってどう変容したかについても次年度検討を予定している。
|
Research Products
(1 results)