2012 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙用耐熱軽量スラスター用耐環境コーティングの設計と実証
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11J10324
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
北澤 留弥 宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | SiC/SiC複合材料 / スラスター / コーティング / 積層材料 / 特性予測 / 機械的特性 / 熱的特性 / 熱応力 |
Research Abstract |
SiC繊維強化SiCスラスターに用いられるSiC繊維織物構造と含浸法を把握し、織物構造の製造方法、製造機器及び含浸前の完成度を見学した。 類似の方法で作製された炭素繊維強化SiCを用いたノズルのプラズマ溶射前後の様子を観察した。溶射によるSiコーティングと熱暴露によるSi融解を組み合わせて開気孔の減少を試みた。しかし、Siの融点は1414℃でありSiCの劣化温度を超えている。現状では溶射厚さが小さく溶解後の膜厚が不十分だが、開気孔の数及び径を減少させる可能性が得られた。 この結果を踏まえ、安定な界面を得るためにSiを用い、かつ加熱温度をSiCの劣化温度である1300℃以下にすることを目的とした。融点を低下させるためSiとの二元系状態図を広く検討したが、ほとんどの合金は1200℃以下の低温域で金属間化合物や相変態を生じ脆くなる。よって、Si溶射コーティングの上に目的金属の溶射コーティングを行い、1300℃未満の熱暴露で一部のみを融解することとした。プラズマ溶射時は一時融点温度のSi単体が表面に触れるが、ごく短時間でSiは固体化する温度まで低下する。よって、プラズマ溶射ではSiCとの安定した界面を得られるSi単体を用いつつ、スラスターの機械的特性の低下を防ぐことができる。また、均等な膜圧を得ることができることが分かっている。選定した金属はFe単体、Cu単体、及び炭素鋼S45Cである。シリコンウエハの上に金属片を置き、Ar雰囲気で2時間の熱暴露により融点を調べたところ、Fe単体が最も融点(約1240℃)、濡れ性ともに優れていることが分かった。 従来の燃焼試験において、スラスターの完全な破壊が材料の耐用応力を超えたためでないことを裏付けることを目的とし、FEMを用いスラスターの実使用時の内部を通過するガス温を含めた温度分布を算出した。高温時の機械的特性を取得し応力を得るのは来年度とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はSiC/SiCスラスターのプロセス、機械的特性の現状、及び機構内部における燃焼試験の従来研究のデータなどを詳細に知ることができた。コーティング材料及びプロセスを実験等により選定でき、スラスターのコーティングの構造がほぼ決定した。燃焼中の温度分布が損傷に対し重要な要因であることが分かり、燃焼試験関係者とのディスカッションを重ね積極的に解析を行い学会発表を行った。昨年の進展状況の遅れを取り戻しつつあり、来年度で「研究の目的」を達成させる目途を立てることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度に取得した情報及び研究結果を総合し、実際に保護コーティングを行ったスラスターを作製し燃焼試験を行う。 保護コーティングは、スラスター表面にガス透過低減のためのSi-Fe二層コーティング、裏面にスパッタリング及びアルミナイズによるPt-Alボンドコート及び電子ビーム物理的蒸着法による8mol%イットリア安定化ジルコニアの熱遮蔽コーティングを行う。コーティングを行ったSiC/SiC試験片の高温時の機械的特性や損傷の特性を引張試験や測定により取得する。実験結果に基づいてコーティングの最適化の最終調整を行い、コーティングを行ったスラスターを作製し、燃焼試験を行う。
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