Research Abstract |
1.新規触媒調製プロセスに基づく触媒調製法の確立 銅触媒の前駆体として銅-アルミナ二元成分を含有するオキサラト錯体の調製条件,特に溶媒の効果について検討した.溶媒には,水,メタノール,エタノール,1-プロパノール,エチレングリコールを使用した.SEM,XRD結果が類似しているメタノール,エタノール,1-プロパノールを溶媒に使用した錯体のCuC_2O_4・nH_2Oの結晶子サイズがそれぞれの溶媒の粘性と直線的な相関を示すこと,また,触媒の金属銅表面積およびCOシフト活性の序列も溶媒の粘性の序列と一致することから,本触媒調製では溶媒の粘性が重要な因子の一つであるとがわかった. 2.COシフト反応の検討 銅触媒におけるCOシフト反応を制御する因子について銅を含有する二元成分触媒(Cu-MOx;M=Al, Fe, Zn, Ce)を用いて検討した.銅触媒の活性点として考えられている金属銅の表面積と活性との関係について調べたところ,同一の系での触媒活性は,傘属銅表面積の増加とともに直線的に増大した.しかし,共存する金属酸化物が異なるとき,その直線の傾きが異なることから,銅触媒の活性は金属銅表面積以外の別の因子にも影響されることが明らかとなった.そこで,触媒活性と触媒の塩基性との関係に着目した.CO_2-TPD測定から算出した弱い塩基点量を触媒の比表面積で規格化した値に対する金属銅表面積当たりの活性をプロットしたところ,弱い塩基点量の増加に伴い活性は増加することがわかった.しかし,強い塩基点をもつ触媒は,多量の弱い塩基点を持つにもかかわらず,低活性であったことから,強い塩基点はCOシフト活性を阻害すると推定した.このように触媒の塩基性もまたCu触媒のCOシフト活性を制御する因子の一つであることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)新規触媒調製プロセスに基づく触媒調製法の確立では,ナノ金属銅触媒を得るために,組成比,溶媒などを変えて触媒を調製し,合成時に粘性の高い溶媒を使用して前駆体を合成することで金属銅を高分散に生成できることを見出した.(2)COシフト反応の検討では,触媒活性が金属銅表面積で制御されること,触媒の塩基性が銅触媒の触媒活性を制御する因子であることを見出した.これら結果は今後の金属錯体から触媒を合成するプロセスにおいて基礎的な指針を提供すると考えられる.また,数多くの成果を公表することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
COシフト反応用銅触媒について,活性制御因子の定量的な検討に取り組む.昨年度の結果から触媒表面に形成したカーボネート種が活性に関与する可能性が示唆されたので,このカーボネートの生成速度および触媒表面の被覆率と活性との関連を明らかにする.また,共存金属酸化物種が与える銅触媒の経時安定性への影響についても検討し,触媒劣化機構の解明を行う. Ni系改質触媒の検討についてはCu触媒の検討に多くの時間を費やしたため,当初予定した研究をすることができなかった.しかしながら,Cu触媒で得られた知見は,幅広い改質燃料への適応性を含めNi系触媒の活性点環境の制御に応用可能と考えられる.Cu触媒と並行して,高活性・安定性を有する触媒開発に取り組む.
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