2011 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀半ばのドレスデンにおけるイタリア絵画の受容に関する研究
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11J10347
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Research Institution | Aoyama Gakuin Women's Junior College |
Principal Investigator |
金沢 文緒 青山学院女子短期大学, 特別研究員(PD)
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Keywords | ドレスデン / 王立絵画館 / ベルナルド・ベロット / 美術館政策 / フリードリヒ・アウグスト2世 / ハイネケン / アルガロッティ / グアリエンティ |
Research Abstract |
本研究は、宮廷画家の地位を求めて辺境の北方諸国を目指した18世紀のイタリア人画家の汎ヨーロッパ的移動に着目し、この芸術現象に接近する手段として、彼らの目的地であり次の旅への出発点でもあったドレスデンにおいて、イタリア絵画がどのように受容されたのか考察するものである。 本年度はまず、ドレスデン王立絵画館におけるイタリア絵画部門の拡充の問題に注目し、イタリア絵画コレクションを購入と展示という観点から考察した。同時期に開館したパリのリュクサンブール宮殿の王立絵画館との比較検討の結果、同時代のフランスの新しい美術館政策と、イタリア絵画への愛好というザクセンの宮廷趣味を折衷させて、啓蒙君主フリードリヒ・アウグスト2世の称揚に集約する形が目指されたことが明らかになった。この成果は、青山学院女子短期大学総合文化研究所で行われた講演「ドレスデン王立絵画館の成立-近代美術館への歩み-」において発表した。 さらに、ドレスデンに招聘されたイタリア人画家の創作にドレスデンのイタリア絵画コレクションが与えた影響について、作品模倣という観点から考察した。彼らの多くが参画したフリードリヒ・アウグスト2世とブリュール伯の絵画コレクションの複製版画集を分析し、イタリア人画家は主に版画化のための準備素描の制作を担当し、企画者側によって各画家の個性に合った作品が割り当てられたことが分かった。企画は王立絵画館の関係者が進めたものであり、今後美術館政策と関連づけて論じることが可能であろう,また、この問題を具体的な作品分析を通して考察する作業も並行して進め、調査成果として、日本西スラヴ学研究会において発表「ポーランド国王としてのアウグスト3世-ベルナルド・ベロットの寓意画の考察-」を行った。調査の過程で本研究とは別の問題設定も必要となることが明らかになったので、俸これについては今後並行して検討し、調査成果の統合を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内での予備調査に基づき、予定通りドイツとイタリアにおいて実地調査を行い、一定の調査成果を得ることが出来た。また、その調査成果を発表する場を持てたことも大変有意義であったと考える。ただ、ドイツの研究機関の特別休館に伴い、現地で予定していた調査の一部が行えなかった。この調査については今後補う形を取りたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の調査を通して明らかになったのは、18世紀半ばのドレスデンをめぐる美術状況が王立絵画館を中心としていた点である。当時の芸術的中心地であったイタリアやフランスとは異なり、ドレスデンは芸術環境としては未成熟であったと言え、ドレスデンの美術現象を主導したのは王立絵画館の関係者に限定されていたと考えられる。それが美術アカデミーの創設によって多様化していったことが現時点では予想される。このため、来年度以降は、1747年の王立絵画館の創設から1764年の美術アカデミーの創設までを一つの時間的な指針として研究調査を進めていくことにしたい。
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Research Products
(5 results)