2011 Fiscal Year Annual Research Report
ソビエト政権初期のフェルガナ地方における社会経済史研究
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11J10370
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 暁 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 遊牧民 / 中央アジア / クルグズ / 農耕 / ロシア帝国 / フェルガナ / セミレチエ / ウズベキスタン |
Research Abstract |
今年度実施した4回の発表を通じて、遊牧民と定住民の相互関係に関して研究が進展した。4月23日、イスラーム地域研究若手研究者の会において、「フェルガナ地方のクルグズ遊牧民と1916年反乱」に関して発表を行い、クルグズ遊牧民の農耕化と社会経済的関係が1916年反乱の展開に与えた影響について報告した。10月30日、ウズベキスタン・日本学生学術フォーラム2011において「帝政ロシア支配期フェルガナ社会のGIS分析」の発表を行い、帝政ロシア支配期のフェルガナ地方の社会経済状況を復元し、地域研究と歴史研究の分野においてGISが持つ可能性と課題に関して検討した。11月6日、2011年度史学会大会東洋史部会において、「1916年反乱におけるクルグズ-地域間比較の試み-」の報告を行い、統計資料のGIS分析と文献史料および先行研究の検討を通じて、1916年反乱におけるクルグズの行動を整理し、地域間比較の視点からその要因を分析した。2012年2月4日、北海道中央ユーラシア研究会において「帝政ロシア支配期のクルグズによる騒擾と蜂起-フェルガナとセミレチエの比較を中心に-」の報告を行い、帝政ロシア期の騒擾におけるクルグズの行動と帝政ロシア支配のもとでのクルグズの位置づけを検討した。以上の発表を通じて修士論文の内容を修正し、分析対象の地域を拡大した。現在以上の内容をまとめた雑誌論文を執筆中である。 2月22日~3月16日、キルギス共和国中央国家文書館において史料調査を実施した。ロシア革命以前のクルグズ遊牧民の社会経済状況を記録する土地税委員会及び移民局のフォンドの調査を進め、統計資料の作成過程に関して多くの情報を得、今後のGIS分析のための量的データの収集を実施した。ソ連期に関しては文書館の総合カタログを通覧し、資料群のリストアップを行った。研究の進展により当初計画のタシケントに替えてビシュケクの調査を優先した。タシケント調査は2012年度に改めて実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度内に複数の学会、研究会での発表を実施し、修士論文で取り扱ったテーマを方法論と対象領域の両面から拡充することが出来た。現在2011年度に行った発表をもとにした雑誌論文を執筆中である。 クルグズスタンにおける史料調査では19世紀から20世紀前半にかけての中央アジア社会経済史に関する重要な資料を数多く収集することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
現在執筆中の帝政ロシア期のクルグズの農耕化を取り扱った雑誌論文を完成させ、2012年度中の投稿・掲載を目指す。 クルグズスタンでの史料調査において収集した史料の分析を通じて、遊牧民の定住化に関する現地民とロシア帝国との交渉に関して興味深い事例を複数発見することが出来た。該当史料の分析を進め、定住化の意義に関して再検討を進める。 夏期にウズベキスタンのタシケントの文書館において史料調査を実施する。研究の進展状況に応じてカザフスタンのアルマティおよびクルグズスタン南部のオシュの文書館での史料調査を実施する。
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