2012 Fiscal Year Annual Research Report
ソビエト政権初期のフェルガナ地方における社会経済史研究
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11J10370
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 暁 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | キルギス / 中央ユーラシア / ロシア帝国 / 遊牧 / 農耕 / 灌漑 / 社会経済史 / 地理情報システム(GIS) |
Research Abstract |
本研究の目的は、帝政ロシア期からソ連による全面的集団化期に至るまでの中央アジア農村の変容過程を、穀物生産、灌漑と天水農業の文化的・経済的意義、そして遊牧民の定着農耕民化といった複眼的な観点から解明することにある。 本年度研究実施計画に記載した帝政ロシア期のクルグズの社会経済的変容を分析した雑誌論文「帝政ロシア支配期のクルグズの社会経済的変容」を『内陸アジア史研究』28号に投稿し査読の結果採用となった。本論文はクルグズ遊牧民のロシアによる統治への対応に関して、.特にフェルガナ地方における天水農耕の拡大に注目して分析を行ったものである。19世紀から20世紀初頭のクルグズ遊牧民の農耕の展開を一次史料に基づいて明らかにし、他の定住集団との関係の中に位置付けたという意義を持つ。 また研究計画に予定した史料調査をウズベキスタン・タシケントにおいて2012年7月17日から8月11日の期間実施した。ウズベキスタン共和国国立中央文書館及び国立中央図書館において、中央アジア全域の遊牧民の社会経済的動向を解明するための史料を収集し、有意義な成果を得た。 帰国後、収集データの分析を実施し、その分析をもとに2012年12月2日、国際学会Asian Network for GIS Studiesにおいて報告を実施した。本報告は前掲論文で実施したクルグズ遊牧民の分析に、サマルカンド州のカザフ遊牧民の状況との比較を加えて、GISを利用して分析したものである。本報告は、中央アジアの遊牧集団に対するロシア帝国の経済・移民政策が一定の原則を欠き、その結果一部の遊牧民は既得権益を維持しえたものの、多くは経済的な不安定に陥ったこと、そのような社会経済的差異が帝政ロシア末期の1916年反乱において遊牧民集団が多様な反応を示した要因の一つであったことを示した。本報告はロシア帝国支配下の遊牧民の社会経済状況とロシア帝国末期の反乱に対する遊牧民の対応との相関を実証的に示し、類型化したという意義を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、帝政期からソ連による全面的集団化期に至るまでの中央アジア農村の変容の過程を、穀物生産、灌概と天水農業の文化的・経済的意義、そして遊牧民の定着農耕民化といった複眼的な観点から解明することにある。本年度は研究計画に記載した、帝政ロシア期のフェルガナ地方とセミレチエ地方の社会経済的変容を分析した雑誌論文「帝政ロシア支配期のクルグズの社会経済的変容」を『内陸アジア史研究』に投稿し査読の結果採用となった。予定した史料調査をウズベキスタン・タシケントにおいて2012年7月17日から8月11日の期間実施し、有意義な成果を得た。当初の計画通り、データのGIS分析を実施し、それをもとにした学会発表を2012年12月2日、国際学会Asian Network for GIS Studiesにおいて報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度4月初頭より1年間ウズベキスタン科学アカデミー歴史学研究所において、研究指導委託を受ける。その間、中央アジア近現代史及び人類学を専門とする歴史学研究所のスタッフより指導を受け、ソ連崩壊後の中央アジア現地における研究の進展と研究動向、さらに世界的な研究状況について学ぶ。同時にタシケントを始め、ウズベキスタン各都市の公文書館及び図書館において集中的な史料調査を実施する。さらにタシケントを拠点としてカザフスタンのアルマトィ等において調査を実施し、遊牧民社会の変容に関する史料を収集する。収集した史料の分析を進め、特に帝政ロシア崩壌からソビエト政権初期にかけた時期に関する研究を進める。タシケントでの研究を基に現地あるいは日本において学会報告を行い、報告の際に得られた意見を反映した論考の作成を開始する。また2012年12月にAsian Network for GIS Studies国際学会において報告した内容を論考にまとめ、同学会のWebジャーナルへの投稿を目指す。
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Research Products
(2 results)