2011 Fiscal Year Annual Research Report
後期スコラ哲学との比較に基づいたデカルト存在論の体系的研究
Project/Area Number |
11J10398
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今井 悠介 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | デカルト / スコラ哲学 / 存在論 / 区別の議論 / 知識論 |
Research Abstract |
本研究は、アリストテレスースコラ的な類種概念による秩序から別の秩序(実体・属性・様態概念によって語られる存在者の秩序、及び、観念による認識の秩序)への概念枠組みの変化の分析を基にして、デカルトの存在論の特質を描くことを目的としている。本年度は、主にデカルト哲学内部の体系構成の検討、及び関係諸概念の連関を検討し、スコラ哲学からデカルト哲学への概念枠組みの変化を分析するための準備作業を行った。1.デカルト哲学の体系構成についての検討。『省察』及び『哲学原理』の読解を通して、デカルトの存在論の前提に「区別の議論」があること、さらにその前提としてデカルトの知識論や「明晰判明」概念があることを明らかにした。2.「明晰判明」概念の内実の検討。「明晰判明」概念と、デカルトにおける観念間の認識における依存関係の分析が密接に連関していること、また、その依存関係の分析と「区別の議論」が密接に連関していることを明らかにした。3.デカルトの「区別の議論」とスアレスの区別論との比較検討。『形而上学的討論』の読解を通して、スアレスの区別論とデカルトの区別論を比較した。その結果、スアレスはまず実体を含めた存在の「一性」について論じ、ついでそれらの区別を論じるが、デカルトにおいては存在について論じる前に区別について論じる、という逆の構造が見出された。このものとものとの依存関係の分析から出発する考えは初期の思想とも通ずるものであり、区別論を介して初期の構想が『省察』や『哲学原理』に引き継がれているという仮説、解釈視点を得るに至った。 次年度は後期・近世スコラのカテゴリー論と実体論の検討、及びラフレーシュ学院で教授されたと思しきテクストの検討等を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度行う予定であった実体論の比較は次年度以降に持ち越すことになったが、次年度に行う予定であったデカルト哲学の体系構成の検討を今年度は先取りして行った。また、その結果、今後の研究の進展にとって有益である、両者の存在論を比較する上での重要な比較視座が得られたので、おおむね研究は順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は後期・近世スコラのカテゴリー論と実体論の検討、及びラフレーシュ学院で教授されたと思しきテクストの検討等を行い、デカルトの体系構成に比した、スコラの存在論の前提となっている概念枠組みの検討を行う予定である。また、初期の学の構想が「区別の議論」を介して引き継がれている可能性という解釈視点を検証する試みも、次年度以降に合わせて行っていきたい。スコラの側の概念枠組みと、デカルトの側の概念枠組みの検討を同時に行いつつ、構造の違いを検討し、それによってデカルトの存在論の特質を描き出そうという方策である。
|
Research Products
(1 results)