2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内共生細菌ボルバキアがシルビアシジミの寄主植物転換と進化プロセスに及ぼす影響
Project/Area Number |
11J10420
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
坂本 佳子 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ボルバキア / 寄主転換 / 散乱選好性 / ミヤコグサ / シロツメクサ |
Research Abstract |
共生細菌ボルバキアに感染したシルビアシジミの寄主植物転換の要因を明らかにすることを目的として、大阪府豊中市でシロツメクサを利用する個体群(以下、豊中)と兵庫県加東市でミヤコグサを利用する個体群(以下、加東)の交配実験を行い、各寄主植物に対する1)幼虫の利用能力と2)雌成虫の産卵選好性を調査した。またボルバキア感染別の交配を実施し3)性比やふ化率を調査した。 1)豊中雌と豊中雄の交配から得られた子世代(豊中♀×豊中♂、以下同様)、加東♀×豊中♂、加東♀×加東♂の蛹体重は、ミヤコグサ摂食個体のほうがシロツメクサ摂食個体よりも有意に重かった。どちらの寄主植物条件においても、加東♀x加東♂より豊中♀×豊中♂の方が有意に重く、個体群間の交雑子世代では、おおむねそれらの中間値をとった。寄主植物の利用能力に差がある可能性が考えられたが、死亡率には差がなく、発育遅延が認められなかったことから、体サイズが異なる可能性も示唆された。ボルバキア感染による蛹体重や発育日数の差は認められなかった。 2)雌成虫にミヤコグサとシロツメクサを同時に提示したところ、加東♀×加東♂はシロツメクサにはほとんど産卵せず、豊中♀×豊中♂はシロツメクサに多く産卵し、個体群間の交雑子世代では、おおむねそれらの中間値をとった。幼虫期に与えた寄主植物別に解析すると、豊中♀×豊中♂がシロツメクサに産卵した割合は、ミヤコグサ摂食個体よりシロツメクサ摂食個体のほうが、有意に高かった。ボルバキア感染による選好性の差は認められなかった。 3)豊中は2系統のボルバキアに感染しており、そのうち1系統が細胞質不和合を起こすことも考えられたが、交配実験の結果、その可能性は低いことが明らかになった。しかし、異なる個体群間の一部の交配において、著しく低いふ化率や雌の交尾拒否がみられたため、次年度は詳細な調査を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究材料であるシルビアシジミは人工条件下で飼育個体を交尾させることが困難で、これまで交配実験を円滑に進めることができなかったが、当該年度は飼育した雌と野外採集した雄をネットに入れると比較的容易に交尾が成立することを発見し、この方法を用いて順調に交配実験を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
寄主植物への産卵選好性の要因が明らかになりつつあり、次年度は他の個体群を含めて、寄主植物のモデルなどを用いた実験を行う予定である。また、当該年度に実施した実験により、新たに見つかった課題(異なる個体群間の交配による低いふ化率や雌の交尾拒否など)についても明らかする予定である。 山梨個体群については、当該年度は1♀しか採集できなかったため、ωEmeTn2と本種の相互作用の解明について明らかにするための十分な個体数が得られなかった。次年度は、採集地や採集時期を綿密に選定する必要がある。
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Research Products
(7 results)