2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内共生細菌ボルバキアがシルビアシジミの寄主植物転換と進化プロセスに及ぼす影響
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11J10420
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
坂本 佳子 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ボルバキア / 寄主転換 / 産卵選好性 / ミヤコグサ / シロツメクサ |
Research Abstract |
共生細菌ボルバキアに感染したシルビアシジミ(以下、本種)の寄主植物転換の要因を明らかにすることを目的として、日本各地の個体群について1)雌成虫の産卵選好性と2)幼虫の利用能力を調査した。また3)ボルバキア感染状況や性比異常を調査し、4)本種の遺伝的構造との関連性を明らかにした。 1)計8ヶ所の個体群を対象として、ミヤコグサとシロツメクサに対する雌成虫の産卵選好性について調査した。その結果、両植物に産卵する個体群とシロツメクサにはほとんど産卵しない個体群が確認され、個体群間で選好性は異なることが明らかになった。 2)計4ヶ所の個体群を対象として、両植物による幼虫の飼育を行った。その結果、羽化率には個体群と供試植物による違いは認められず、ほとんどの個体が正常に羽化したが、蛹体重は、いずれの個体群においても、ミヤコグサを与えた区の方が有意に重かった。各寄主植物区における蛹体重は、個体群間で有意に差があった。 3)計14ヶ所の個体群を対象として、ボルバキアの感染状況を調査したところ、3系統のボルバキアが検出された。そのうち1系統は雄殺しと性モザイク化を引き起こすことが明らかになった。感染状況は個体群によって異なった。 4)計14ヶ所の個体群を対象として、本種のミトコンドリアDNA(mtDNA)と核DNAの遺伝的多様性を調査したところ、ハプロタイプ構成はmtDNA、核DNAともに個体群によって異なった。さらに、ボルバキアがmtDNAのハプロタイプ構成に影響を与えることが示唆された。 産卵選好と蛹体重において、異なる形質を持つ個体群間で交配実験を行ったところ、ボルバキア感染系統に関わらず、いずれも各個体群の中間的な形質になり、寄主植物転換におけるボルバキアの関与は明らかではなかった。日本各地の遺伝的多様性と寄主植物選好性の結果から、一部の個体群において、本来の食草であるミヤコグサから帰化種であるシロツメクサに寄主拡大したと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、当該年度も交配実験を円滑に進めることができ、供試個体数を増やすことに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
山梨県の個体群については、前年度と合わせて2個体しか採集できなかったが、感染したボルバキアを特定することができた。これまで、ωsp領域のみの解析の結果、山梨個体群では、他の調査地で雄殺しを引き起こすことが知られているωEmeTn2に感染した雄が発見されると報告されていたが、異なる領域であるftsZ領域を新たに解析した結果、別系統のボルバキア(ωEmeNy1)であることが明らかになった。 今後はωEmeNy1の感染ルートや生殖操作を明らかにする予定である。
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Research Products
(6 results)