2011 Fiscal Year Annual Research Report
牛ボツリヌス症由来菌の産生する毒素の性状解析と特異診断法の確立
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11J10628
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Research Fellow |
中村 佳司 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 牛ボツリヌス症 / ボツリヌス神経毒素 / イムノクロマトグラフィー |
Research Abstract |
本研究では、牛ボツリヌス症の発症機序解明のための基礎的な毒素の活性発現機構の解析と毒素の特異検出法の開発を行っている。本症の原因毒素はC型神経毒素(BoNT/C)とD型神経毒素(BoNT/D)のキメラ構造を有する、D/Cモザイク毒素(BoNT/DC)である。BoNT/DCは酵素活性を持つ軽鎖がBoNT/Dと、受容体結合活性を持つ重鎖C末端領域BoNT/Cとそれぞれアミノ酸配列の相同性が高い。BoNT/C、BoNT/Dのマウスとラットに対する体重あたりの毒性はほぼ同程度であったが、BoNT/DCのラットに対する致死活性はマウスと比較して著しく低かった。BoNT/Dの基質であるVAMPのマウスおよびラット由来のリコンビナント蛋白に対するBoNT/DCの基質切断活性を比較すると、BoNT/DCの毒素活性の違いはVAMP1切断活性に起因することが示唆された。また、BoNT/DのとBoNT/DCのマウス顆粒細胞に対するグルタミン酸放出阻害活性は同程度であったが、ラット顆粒細胞に対するBoNT/DCの活性はBoNT/Dより低かった、TLC免疫染色法において、BoNT/DCはBoNT/Cと異なりガングリオシドGM1aに強く結合することが分かった。これらの結果は、BoNT/DCがBoNT/CやBoNT/Dとは異なる性状を持っていることを示唆しており、牛ボツリヌス症の発症機序を知る上で重要な基礎データであると考えられる。 BoNT/DCに対する特異モノクローナル抗体を用いて、イムノクロマトグラフィーキットを開発した。本キットの検出感度をBoNT/DCを産生するOFD05株培養上清を用いて調べると、培養上清中の毒素をマウス致死活性に換算して10 LD_<50>検出できた。本検出系は特異な構造を持つBoNT/DCを迅速・簡便に検出することで、牛ボツリヌス症を診断する新たなツールとなり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに実験を進め、多くのデータを得ることができ、その結果を学会で発表し、他の研究者と討論を重ね本テーマに対する多角的な検討を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
BoNT/DCの酵素活性、脂質結合活性に関する基礎的な知見を基に、さらに毒素の分子生物学的解析を行う。本毒素は既知のBoNT/DやBoNT/Cと異なる性状を、特に受容体結合ドメインに有していると推察された。今後は毒性発現におけるBoNT/DCの特性を明らかにするために、毒素の受容体候補の探索を中心に解析を行う。また、BoNT/DCを特異的に検出するイムノクロマトグラフィーキットについて、実際に牛ボツリヌス症が疑われる検体を用いて本キットの有用性を評価する。
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Research Products
(3 results)